NISTEP注目科学技術 - 2022_E156

概要
電子ホログラフィー

通信や放送、医療用3D映像技術において、フルカラーの電子ホログラフィーの実現が期待されている。現在のAR(拡張現実:AugmentedReality・VR(仮想現実:VirtualReality)技術や医療応用の分野では、ゴーグルを使ったいわゆる2眼立体方式が主流である。複数の観測者が同時に3D映像をフルカラーで観察するためには、ゴーグルの不要な電子ホログラフィーの実現が期待されている。電子ホログラフィーにおいて、再現される3D映像の視域角30°以上を確保するためには、位相の揃った光の干渉効果を利用する原理的な要請から、1µm以下の画素ピッチからなる空間光変調器(SLM: Spatial Light Modulator)の開発が不可欠となる。さらに、1µmの画素ピッチのSLMが開発された場合であっても、現在実用化されている8K(3,300 万画素)ディスプレーの画素数では、高々8㎜×4㎜程度の小さいSLMしか実現できない。そこで、実用的な電子ホログラフィーの実現のためには、5インチのスマホサイズの60K×120K(72億画素)、A4タブレットサイズの200K×300K(600億画素)の超多画素の画素数を持つ SLMを実現する必要がある。
キーワード
AR・VR / ホログラフィー / SLM
ID 2022_E156
調査回 2022
注目/兆し 注目
所属機関 団体
専門分野 ナノテクノロジー・材料
専門度
実現時期 5年未満
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 61 (人間情報学)
分析データ クラスタ 37 (電磁波・光学・レーザー・光半導体)
研究段階
現在は、原理検証・基礎実験の段階である。計算機生成ホログラムCGH(Computer-Generated Hologram)や光伝搬シミュレーション技術とSLMを組み合わせた基礎的検討が行われている。
SLMの種類としては、シリコンバックプレーン上に形成した液晶デバイスの研究が主流となっているが、磁性体を使ったスピン注入デバイスや磁壁移動型スピン光変調デバイスの研究が日本国内で行われている。
さらに、光の制御性を確保するため、アンテナ技術で活用されているフェーズドアレイの技術を光に応用したビームステアリング(Beam-Steering) の開発も重要である。この分野では日本国内ばかりでなく、MITなど欧米の大学が先行しているが、韓国のサムスン電子などでも研究を進めている。
インパクト
2022年調査にはこの項目はありません。
必要な要素
現状3µmピッチの画素ピッチである液晶SLMを1µm以下の画素ピッチにする必要がある。また、SLMの超多画素化、SLMの高速駆動技術、映像圧縮伝送技術、信号処理技術の開発のほか、ミリ波などアンテナ技術で活用されているフェーズドアレイの技術を光に応用したビームステアリング(Beam-Steering) の技術開発も進める必要がある。