NISTEP注目科学技術 - 2022_E148

概要
レーザープラズマ加速は高強度レーザーをガスや固体等の標的に照射し、高エネルギーの電子やイオンを非常に短い距離で発生する技術で小型加速器実現に向け現在世界各国で研究開発が進められている。電子についてはガス中でプラズマ波を生成し、その電場で電子を加速する。加速勾配としては従来技術の3桁を超える能力を持っているため、加速器の小型化が見込まれ、自由電子レーザーへの応用が期待されている。さらにプラズマ波の波長の短さから、非常に短い時間幅の電子が発生可能なため、これを利用した超高速電子顕微鏡への応用も期待されている。
一方、イオンについては、固体標的からレーザーで加速された電子が放出される際にできるシース場を利用して加速され放出される。こちらは小型の粒子線治療装置への応用が期待されている。
キーワード
レーザー加速 / 自由電子レーザー / 粒子線治療装置
ID 2022_E148
調査回 2022
注目/兆し 注目
所属機関 公的機関
専門分野 その他
専門度
実現時期 5年以降10年未満
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 15 (素粒子、原子核、宇宙物理学)
分析データ クラスタ 37 (電磁波・光学・レーザー・光半導体)
研究段階
レーザー電子加速に関しては、加速原理提唱から数十年間で数十cmの距離でエネルギー8GeVを超える電子ビームや数fsの電子バンチの生成が報告されてきた。プラズマを使用しているため開発当初は非常に不安定なビームで利用できるものではなく、期待も薄かったが、地道な研究開発努力によって、高強度レーザーの安定化と高品質化、ターゲットの改良などにより電子ビームの安定性も向上し、ビーム品質の良いビームが得られてきている。ここ数年ではレーザー加速器の5Hz、24時間運転に実現や、アンジュレータを使った自由電子レーザーの発振の報告がされており、非常に目覚ましい進展があり、実用できるレベルまであと一歩のところまで来ている。
インパクト
2022年調査にはこの項目はありません。
必要な要素
現在、数100MeVクラスの電子ビームであれば比較的安定して発生することができていて、それを利用した装置であれば近い将来実現する可能性が高いと考えている。一方で、ILCなど、さらなる高エネルギーを必要とする場合、レーザー加速を何回も行うステージング技術の進展が不可欠で、また、電子の総数を必要とする場合は、レーザーやターゲットの高繰り返し化が必要であり、そこにも技術進展が必要である。