NISTEP注目科学技術 - 2022_E72

概要
動物飼育由来の食肉を代替する培養肉生産法の確立。食用肉の消費において、倫理的な問題に加え、動物の飼育に伴う多量の二酸化炭素排出が与える環境負荷が問題視されている。近年、動物の可食部分の細胞を人工的に培養することで、動物由来の食肉の代替品を作り出そうとする試みが活発に進められている。2022年時点で培養肉を利用した商品開発に取り組むスタートアップ企業が世界で数十社以上存在し、既に調理可能なサイズの培養肉の生産を実現している。細胞の由来を選択することで、多種多様な動物の培養肉を製造することができるため、将来的に人が消費する食肉を広く置換することが期待されている。
キーワード
細胞プリンティング / 環境負荷低減の生産 / 培養肉製造
ID 2022_E72
調査回 2022
注目/兆し 注目
所属機関 公的機関
専門分野 ライフサイエンス
専門度
実現時期 5年以降10年未満
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 38 (農芸化学)
分析データ クラスタ 25 (食品化学・栄養学)
研究段階
これまでは、細胞を均一に培養して積層した、いわゆるミンチ状の肉が主に生産されていたが、最近になって、細胞の3Dプリンティング技術を駆使することで、筋組織の配向制御や脂肪・血管などの組み込みにより、サシの入った和牛様の複雑な構造を再現する技術が報告された(Nature Communications, 2021, 12, 5059)。このように、組織工学の最先端技術を利用することで目的に合致した任意の構造の食肉を生産できるようになりつつある。その結果、質の高い食肉を得るために、動物や環境に高い負荷をかけて品種改良や飼育をする必要がなくなることが期待されている。
インパクト
2022年調査にはこの項目はありません。
必要な要素
培養肉を加工した食品を実際に目にしたり食したりすることが可能な機会が増えつつあり、同時に昨今の持続可能な社会に対する関心の高まりから、従来の食肉の代替として培養肉を受け入れる素地が世界的にできつつある。しかしながら、現時点では培養肉を生産するためのコストが著しく高いため、現在の食肉の消費量を置き換えるには程遠い状況にある。培養肉商品が社会に広がるためには、培養肉生産をスケールアップするための技術開発に加え、動物由来の食肉と同等、あるいはそれを上回る品質の食肉を安定的に製造するための技術開発が必須である。