NISTEP注目科学技術 - 2022_E70
概要
2050年のカーボンニュートラルの実現にむけて、グリーンイノベーション基金事業の一環としてペロブスカイト太陽電池の開発が検討されている。当該太陽電池はシリコンよりも軽量化が可能であり、ビル壁面などのこれまでにない利用方法ができると注目されている。また、その製造は塗布技術で行えるため、生産の簡便さも期待されている。将来的なエネルギー問題の解決には再生可能エネルギー利用が不可欠であるが、日本では太陽光パネルを設置できる平地面積がすでに飽和状態にあり、太陽電池の新たな利用方法を開拓することが求められている。ペロブスカイト太陽電池は軽量でフレキシブルのため、様々な新規応用が可能であると考えられる。
キーワード
ペロブスカイト / 太陽電池 / カーボンニュートラル / 再生可能エネルギー
ID | 2022_E70 |
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調査回 | 2022 |
注目/兆し | 注目 |
所属機関 | 公的機関 |
専門分野 | エネルギー |
専門度 | 高 |
実現時期 | 5年以降10年未満 |
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) | 36 (無機材料化学、エネルギー関連化学) |
分析データ クラスタ | 27 (理化学/半導体・ナノ・材料) |
研究段階
ペロブスカイト太陽電池は近年世界的にも精力的に研究されている。実用化にむけた課題は耐久性であり、光に性能が劣化するという太陽電池においては致命的な問題を抱えている。既存のシリコン太陽電池は20~30年程度の耐久性があるが、ペロブスカイト太陽電池の場合は長くても数年程度である。また、現状では発電効率の高いペロブスカイト太陽電池で耐久性の長いものはあまり報告されていない。また、高効率を得るためには鉛を用いることも問題視されており、環境配慮に向けて鉛フリーでかつ高効率・長期信頼性を有するペロブスカイト太陽電池を開発することが研究テーマとなっている。
インパクト
2022年調査にはこの項目はありません。
必要な要素
将来的にペロブスカイト太陽電池を生産するうえでは中国との競争になることが考えられる。シリコン太陽電池の歴史を辿ると、かつては日本国内のメーカーが世界シェアをリードしていたが、やがて価格面で中国企業に対抗できなくなり、日本国内では価格競争に敗れた多くの製造メーカーが太陽電池の生産から撤退した。ペロブスカイト太陽電池も同様のことが起きると懸念されており、シリコン太陽電池の歴史を繰り返さないための対抗策を備える必要がある。