NISTEP注目科学技術 - 2022_E61
概要
視線計測技術は人がどこを見ているのかをカメラなどによって計測する技術である。視線計測はこれまでにも行動科学分野で活用されてきているが、一方でそれは「人を理解する手段」の一つであった。2010年代になり、視線計測装置の低価格化やオープンソースでの視線計測装置などの登場により、視線計測は人を理解する手段の一つから、コンピュータの操作インタフェースの一つとして注目されるようになってきた。2017年にはマイクロソフト社がWindows 10において視線計測装置を標準でサポートするようになり、視線インタフェースはコンピュータの利用手段として定着した。2020年代になり、バーチャルリアリティ(VR)用のヘッドマウントディスプレイ(HMD)に視線計測装置が搭載されるようになり普及が始まった。通常のコンピュータ利用の場面においても、視線インタフェースの活用事例が増えてきており、同時に視線インタフェースの技術開発に関する研究が急速に発展してきている。ユーザインタフェースの研究領域であるヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)においては、視線インタフェースに関する研究発表の件数が日本国内だけでなく、世界的に増えてきている。
キーワード
視線インタフェース / バーチャルリアリティ / 視線計測技術 / ユーザインタフェース / ヒューマンコンピュータインタラクション
ID | 2022_E61 |
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調査回 | 2022 |
注目/兆し | 注目 |
所属機関 | 大学 |
専門分野 | 情報通信 |
専門度 | 高 |
実現時期 | 5年以降10年未満 |
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) | 61 (人間情報学) |
分析データ クラスタ | 18 (マシンインテリジェンス/ロボティクス・人間工学) |
研究段階
視線インタフェースは手足を使わずにコンピュータを操作することができるため、歴史的に身体の不自由な人のための技術であると考えられてきたが、一方で視線インタフェースの低価格化およびバーチャルリアリティでの利用活用により、健常者においても広く普及の兆しがでてきた。一方で、現代の視線インタフェースはタッチ操作やマウス操作よりも低速であり、エラー率が高く、使用負荷が高いことが知られている。このため、これらの弱点を克服するべく、数多くの視線インタフェースが提案されてきている。視線インタフェースは、将来タッチ操作に変わるインタフェースであると考えられており、その技術開発に関する研究は多くなく、特にタッチ操作インタフェースで世界をリードした日本であるが、視線インタフェースはそのような状況にはなっていない。
インパクト
2022年調査にはこの項目はありません。
必要な要素
日本国内においては、視線インタフェースは研究領域としてまだ認知されておらず、まだ個々の研究者が細々と研究開発を行っている段階である。企業においては全くといって良いほど注目されておらず、学術界がリードして研究を進める必要がある分野である。また、視線計測技術は、実用的なインタフェースとなるための壁がまだ数多く残されており、要素技術の開発についても進展が必要である。視線計測技術とインタフェースの社会的な普及の実現に向けては、研究コミュニティの創成、実用的なインタフェース技術の開発、企業による普及に向けた製品開発など、数多くの必要な要素が残されている。