NISTEP注目科学技術 - 2022_E58
概要
ドメイン特化型コンピューティング技術。すべてのコンピューティング処理を一つのプログラミング言語や汎用型CPUで行うのではなく、特定の応用分野に着目し、処理の大幅な効率化・高性能化と生産性の向上を狙う。ドメイン特化型においては、処理を記述するプログラミング言語の抽象度から、実際の演算を行う回路の構成方式まで幅広くカスタマイズし、無駄なものをそぎ落とし、超高並列な処理が可能となるように工夫を重ねていく。産業界においては、AI分野向けに特化したチップやプログラミングフレームワークの開発が盛んにおこなわれている。開発のための生産性を向上させ、AI分野に限らず、社会的なニーズがある多様な分野への適応が望まれている。
キーワード
低消費電力な情報処理 / ドメイン特化型コンピューティング技術 / スーパーコンピュータ
ID | 2022_E58 |
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調査回 | 2022 |
注目/兆し | 注目 |
所属機関 | 大学 |
専門分野 | 情報通信 |
専門度 | 高 |
実現時期 | 5年以降10年未満 |
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) | 60 (情報科学、情報工学) |
分析データ クラスタ | 38 (計算機・電気通信・通信デバイス・量子計算機) |
研究段階
ドメイン特化型のハードウェアアクセラレータは、産業界においていくつか実用化の事例が見られる。一方、ドメイン特化型のプログラミング言語から処理効率が高い実行可能コードを生成するためにはソフトウェアのレイアにおける変換技術の高度化が必要であるが、現状では、人間が手作業で変換したほうが性能効率が高いコードが生成される場合が多い。人工知能技術や数理最適化技術を駆使して、人間の手作業での変換をしのぐ性能効率を達成するというブレークスルーが必要である。また、スパコンにおいてどのようにドメイン特化を進めるかというのも重要な研究である。スパコンのハードウェアやソフトウェア開発環境はある程度の汎用性が求められているのが現状であり、どのようにドメイン特化型の考え方を取り入れていくかは、システムデザインの考え方の面でブレークスルーが必要と感じる。
インパクト
2022年調査にはこの項目はありません。
必要な要素
昨今の半導体への関心の高まりもあり、ハードウェアの開発に関しては、IoTや組込み向け、クラウド向けなど民生品に応用できるような製品開発は今後進むと思われるが、個別の応用が成功するかどうかは目的とする性能を達成するソフトウェアの開発が低コスト且つ短期間でスムーズに進められるかという要素も大きいため、ソフトウェアの面の研究も重要である。同様に、処理のプラットフォームとして、スパコンのインフラは年々重要になっているが、スパコンの利用に関してはまだ一部の専門家が占有的に使っているのが実状であるため、技術普及や利用の民主化を進め、多様なブレークスルーを引き金となるべきである。ドメイン特化型を可能とする現実的に使いやすいハードウェアの開発とその共同利用の方式の面でもブレークスルーが必要であろう。