NISTEP注目科学技術 - 2022_E22

概要
精神・神経疾患の疫学・遺伝学的研究やモデル動物での基礎脳科学研究から、精神疾患や脳機能老化の病態とは別に、精神疾患や脳機能老化を能動的に防ぎ回復を促す抵抗性(レジリエンス)の存在が提唱されている。モデル動物での基礎研究を中心にそのメカニズムの一端が分子・細胞・神経回路レベルで明らかにされつつある。このメカニズムを解明して操作技術を開発するとともに、ヒトの脳科学研究と対応づけることで、レジリエンスを増強し、幅広い精神・神経疾患や脳機能老化を防ぐ技術を開発することが可能となる。この科学技術は疾患別の病態とは別に健康を増進することから、その発見・開発は疾患横断的に適応可能である。さらに疾患に至るまでの健常者に適応可能である。従って診療科の垣根を超えた予防・先制医療の実現を目指すもので、医療費の削減に大きく貢献する。
キーワード
メンタルヘルス / ブレインテック / レジリエンス
ID 2022_E22
調査回 2022
注目/兆し 注目
所属機関 大学
専門分野 ライフサイエンス
専門度
実現時期 5年以降10年未満
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 59 (スポーツ科学、体育、健康科学)
分析データ クラスタ 0 (生活習慣病/摂食・吸収・代謝)
研究段階
レジリエンスは元々ヒトの疫学・遺伝学的研究から提唱されてきたが、主に心理学的考察に留まってきた。その生物学的機序に関する研究はモデル動物の研究で先行し、レジリエンスを司る分子・細胞・神経回路メカニズムの一端で明らかにされつつあるが、実態はほぼ不明である。
インパクト
2022年調査にはこの項目はありません。
必要な要素
モデル動物を用いてレジリエンスの生物学的メカニズムの全貌を、一細胞解析を含むマルチオミクス解析、全脳神経活動計測、コネクトームなど解析技術、オプトジェネティクスなど操作技術を活用して解明する必要がある。また得られた多階層データを統合して数理モデルを構築することで、レジリエンスを可視化し予測する技術の開発が求められる。またモデル動物で得られた知見を手掛かりとし、大規模患者レジストリーに対しfMRIによる脳活動計測や生理学的計測、マルチオミクス解析などを適応し、ヒトのレジリエンスのメカニズムを解明するとともに、その心理学的意義を理解する必要がある。さらにニューロ・バイオフィードバックや食品中の機能性成分によりレジリエンスを操作する技術を開発する必要がある。そのためには、モデル動物のデータをヒトに適応するため、基礎・臨床・数理・心理学研究者が緊密に連携した研究体制の構築が重要である。