NISTEP注目科学技術 - 2023_W157
概要
将来的に実現が期待される注目の科学技術は、「生態系予報」です。気象予報は多くの人にとって、イメージしやすいものと思いますが、その生態系バージョンを作ろうという試みです。近年生態系の崩壊のリスクが認知され、現在では気候変動と並んで、重大な危機と考えられています。このような状況下で、開発と上手くバランスを取りながら、人類が存続するためには、生態系の動態を予測する必要があると考えられ、現在は衛星、音声、環境DNAなどの技術を用いて、大規模データを収集し、予測を行おうという試みが数多くなされています。関連して時系列解析などの統計手法の開発も行われています。
キーワード
環境DNA / 生態系ビッグデータ / 生物多様性 / 時系列解析 / AI
ID | 2023_W157 |
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調査回 | 2023 |
注目/兆し | 兆し |
所属機関 | 公的機関 |
専門分野 | 環境 |
専門度 | 高 |
実現時期 | - |
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) | 63 (環境解析評価) |
分析データ クラスタ | 2 (マシンインテリジェンス/センシング・データサイエンス) |
研究段階
今現在は大規模データ収集のための技術開発が行われている状況にあり、環境DNAの関連分野では企業が多く参入し始めている状況にある。また、DNAのシーケンス技術については、シーケンサー開発を行っている企業が数多く存在している。音声に関連した生態系モニタリングもAI技術と組み合わせることにより、技術開発が進んでいる。時系列解析については、様々なものがあるが、Empirical Dynamic Modelなどの新しい手法が近年開発され使われており、今後も技術開発が進むことが予想される。
インパクト
生態系予報が実現した際には、生態系への貢献は当然のこととして、資源の持続的な利用、野生生物由来の新興感染症リスクの減少など生態系と関わること全般に影響を与えうる。また、近年では企業評価の際にサプライチェーンでの生物多様性への影響などが考慮され始める枠組みが制定されつつあり、そうした際にも生態系予報のような詳細なモデルが構築されれば、企業による生態系影響をより詳細に評価することにつながるだろう。
必要な要素
実現に向けて必要な要素は、生態系を観測するモニタリング施設を増やすことである。例えば、環境DNAや音声を収集する場所を気象観測所と同数設置し、リアルタイムにデータを取得することができれば、実現の可能性は高くなるだろう。