NISTEP注目科学技術 - 2023_W156
概要
量子エンタングルメントを利用した量子レーダーに関して、今後発展の余地がある。通常のレーダーは電波などの電磁波を送信し、その反射波を計測する技術である。量子レーダーの場合、エンタングル状態にある2つのペア光子のうち1つをターゲットに向けて送信し、その反射を計測する。このとき反射光子と送信しなかったもう片方の光子がエンタングル状態にあるため、相関を取ることによって所望の反射光子とノイズを切り分けることができる技術である。量子レーダー技術が実現すれば、従来よりも低出力で高感度なレーダーを実現できる可能性がある。
キーワード
量子コンピュータ(量子アニーリング・誤り耐性量子ンピュータ)・耐量子暗号(量子暗号)・量子力学(量子もつれ・量子超越性)・量子関連 技術(量子雑音限界・量子ビーム・半導体量子ビット技術・量子材料・量子センサ・室温量子材料・量子光源)・量子化学 / イメージング技術(リアルタイムイメージング・バイオイメージング(ライブセル・インビボ)・光イメージング・毛髪イメージング・微細領域イメージング) / 予測・観測
ID | 2023_W156 |
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調査回 | 2023 |
注目/兆し | 兆し |
所属機関 | 大学 |
専門分野 | 環境 |
専門度 | 低 |
実現時期 | - |
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) | 13 (物性物理学) |
分析データ クラスタ | 37 (電磁波・光学・レーザー・光半導体) |
研究段階
実験室レベルでの開発が進んでおり、原理実証が進んでいる。一方で遠距離を計測できるような高出力化といった通常のレーダーの代替に向けた研究はまだこれからである。
インパクト
量子レーダーは従来のレーダーと比べて低出力・高感度化が可能であることから、様々な応用範囲が考えられる。例えば自動車に搭載可能な量子センサーは今後の自動運転の普及に向けたセンシング技術で重要な役割を担う可能性がある。また省電力アプリケーションという観点で衛星搭載といった可能性もある。また電波帯域で低出力化ができれば、電波資源の節約も可能である。
必要な要素
量子コンピュータの開発によって周辺技術の開発は急速に発展しているが、一方で特にボトルネックとなるのは冷却系も含めた小型化、およびエンタングル光子の効率のよい生成手法である。電波帯域での量子レーダーを目指す場合、現在はデバイスを極低温に冷却する必要があり、システム上の成約となっている。またエンタングル光子の生成は現在ではまだ微弱量であり、現在のレーダーと比較しても送信電力は桁で足りない。この2点においてブレイクスルーが必要であると考える。