NISTEP注目科学技術 - 2023_W150
概要
近年の生命科学研究において、共通して重要な技術として一細胞の解析、とりわけ一細胞遺伝子発現解析がある。ビッグデータという性質上、実験科学者(いわゆるウェットの科学者)だけでなく数理生物学者や生物情報統計科学者(いわゆるドライの科学者)が研究に参画するのが常となっている。基本的には、時系列でもなく、空間の情報もないもので、データの数の力(統計)に頼っている。一方で、少しずつではあるが、一部の手法(RNA velocityなど)は時間の流れをデータから抽出しようとしているし、空間情報も取得するような実験手法も現れてきている。そこで、今後期待される大きな変化として、これまでの一細胞解析技術を携えて、次のステップとして、時間(ダイナミクス)や空間(細胞間相互作用・細胞環境間相互作用・組織の構築など)を考慮した生命科学を創出することがある。もちろんこれまでも、簡単な生命現象では、時空間形態の形成(パターン形成)の研究は行われてきた。しかし、一細胞の情報と連動して、上の階層である組織や臓器レベルや個体・集団レベルを考える研究は数が少ない。それは、細胞レベルと上位のレベルが、空間スケールとしてギャップがあるということだけではない。細胞は一個一個、その中で状態制御され、各々の役割を担っているため、周辺化してボカして考えることができず、そのために上位の物質階層と原理上リンクできない。数理的な技術の発展あるいは計算機能力の飛躍的な向上によってこの問題を解決した際には、さまざまな大きな生命現象の解明につながる。そのときにはおそらく、細胞を単位としない現象、例えば人間個体を単位とする個体群動態の解析も革新され、そこにはこのたびの感染症感染者数分布のより正確な予測なども含まれる。
キーワード
マルチレベル / 細胞社会 / マルチスケール / 多細胞 / ビッグデータ
ID | 2023_W150 |
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調査回 | 2023 |
注目/兆し | 兆し |
所属機関 | 大学 |
専門分野 | ライフサイエンス |
専門度 | 高 |
実現時期 | - |
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) | 60 (情報科学、情報工学) |
分析データ クラスタ | 46 (データサイエンス/機械学習・AI) |
研究段階
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インパクト
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必要な要素
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