NISTEP注目科学技術 - 2023_W115
概要
動物の群れ行動の原理解明に基づく、さまざまな自然・人工の集団現象の理解・分析や応用の可能性は注目に値します。ムクドリやイワシの群れに見られる一糸乱れず緊密に組織化された集団は、外から命令を下す指揮者やリーダーがいないにも関わらず成立します。後者を中央集権的な組織、前者を自律分散的な組織ということができます。ではなぜ自然の群れは自律分散的な組織になったのか?この問いは集団内の情報伝達の観点から答えることができます。極端に中央集権的な群れ、つまり群れの中の全ての個体が他の個体とは相互作用せず、単にリーダーに従う場合を考えます。このとき、全員が整列した強力な秩序を持った集団が形成可能です。しかし、個々の個体は互いにほとんど情報を伝達しないため、ある一個体の向きの変化が全体に及ぼす影響はほとんどありません。その結果、外敵が群れに接近していたとしても、リーダーが気づかない限り、集団全体の向きを変更することはできないのです。しかし現実の群れでは一部の個体の運動変化が瞬く間に集団全体へと伝達可能となっており、その結果外敵の出現に際しても、群れ全体として対応可能となっています。その鍵となるのは個体間の行動の相関を可能とする相互作用です。この相互作用を解明できたなら後述のようにさまざまな集団システムに応用可能だと期待されています。
キーワード
群れ / 集団 / 自律分散
ID | 2023_W115 |
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調査回 | 2023 |
注目/兆し | 兆し |
所属機関 | 大学 |
専門分野 | ライフサイエンス |
専門度 | 高 |
実現時期 | - |
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) | 3 (歴史学、考古学、博物館学) |
分析データ クラスタ | 51 (生物生態・多様性) |
研究段階
原理・現象が科学的に明らかになり始めている段階。この研究分野は画像解析技術が向上し、生物実験が可能になった2010年以降、急速に拡大している分野といえます。
インパクト
あらゆる自然現象は集団現象とみなすことができます。そのなかでも、自ずから組織化を行う生命現象・社会現象に関して、群れは基盤的な知見を与えると考えられます。具体的には、歩行者の振る舞いをこの枠組みで考えるとき、集団現象のメカニズムや機能的特徴を理解することは、都市・交通・インフラの設計に欠かせないものといえます。
必要な要素
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