NISTEP注目科学技術 - 2023_W92
概要
生物・電気・機械のハイブリッドシステムによって,従来の電気・機械工学の枠組みでは設計が難しい極限環境(高い放射線がある環境)や生体内で動作する,分子情報処理システムや分子ロボットなどの実現が期待できる.
DNA,タンパク質,細胞などの生体材料を利用してDNA回路・遺伝子回路と呼ばれる情報処理をする生体分子反応系を作成したり,DNAオリガミに代表される,分子を組み合わせて構造物を作成したりする研究が今世紀初頭から盛んに行われている(分子サイバネティクス,分子ロボティクス,合成生物学).
これらの研究の多くは,*専ら* 生体分子や細菌・細胞などを材料として用いることが検討されており,主に化学や生物の視点で材料を検討し,システム工学・制御工学などの電気・機械工学的な考え方でそれらを系統的に統合しようという方向の研究である.
一方,近年,上記のような生体材料でできたシステムをコンピュータ制御可能な電気制御デバイスの内部に組み込むことで「生物・電気・機械のハイブリッドシステム」として一体化して設計・実装・制御し,工学応用に資するシステムを設計しようとする方向の研究が始まっている.
従来の電気・機械システムとシームレスにつながった「生体分子システム」を構築し,電気的・機械的に制御することができれば,生体分子反応だけでは実現が難しい,より大きなエネルギーを必要とする実応用にスケールアップできる可能性が考えられる.
例えば,生体分子の情報処理システムによって制御された分子ロボットを,電気的な方法で制御し情報を取り出すことができれば,複数の分子ロボットをクラウド(ネットワーク)で繋ぐことで,単体では実現し得ない高度な情報処理を実現できる可能性がある.
また,ナノ・マイクロスケールの生体分子ロボットと,身の回りの電気・機械システムを連携して応用することができる可能性も考えらえる.人工光合成を行う人工細胞や藻類などとの連携により,環境分野への応用も期待できる.
DNA,タンパク質,細胞などの生体材料を利用してDNA回路・遺伝子回路と呼ばれる情報処理をする生体分子反応系を作成したり,DNAオリガミに代表される,分子を組み合わせて構造物を作成したりする研究が今世紀初頭から盛んに行われている(分子サイバネティクス,分子ロボティクス,合成生物学).
これらの研究の多くは,*専ら* 生体分子や細菌・細胞などを材料として用いることが検討されており,主に化学や生物の視点で材料を検討し,システム工学・制御工学などの電気・機械工学的な考え方でそれらを系統的に統合しようという方向の研究である.
一方,近年,上記のような生体材料でできたシステムをコンピュータ制御可能な電気制御デバイスの内部に組み込むことで「生物・電気・機械のハイブリッドシステム」として一体化して設計・実装・制御し,工学応用に資するシステムを設計しようとする方向の研究が始まっている.
従来の電気・機械システムとシームレスにつながった「生体分子システム」を構築し,電気的・機械的に制御することができれば,生体分子反応だけでは実現が難しい,より大きなエネルギーを必要とする実応用にスケールアップできる可能性が考えられる.
例えば,生体分子の情報処理システムによって制御された分子ロボットを,電気的な方法で制御し情報を取り出すことができれば,複数の分子ロボットをクラウド(ネットワーク)で繋ぐことで,単体では実現し得ない高度な情報処理を実現できる可能性がある.
また,ナノ・マイクロスケールの生体分子ロボットと,身の回りの電気・機械システムを連携して応用することができる可能性も考えらえる.人工光合成を行う人工細胞や藻類などとの連携により,環境分野への応用も期待できる.
キーワード
分子サイバネティクス / 生体分子システム工学 / サイバージェネティクス
ID | 2023_W92 |
---|---|
調査回 | 2023 |
注目/兆し | 兆し |
所属機関 | 大学 |
専門分野 | ライフサイエンス |
専門度 | 高 |
実現時期 | - |
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) | 20 (機械力学、ロボティクス) |
分析データ クラスタ | 54 (理化学/分子化学) |
研究段階
基礎研究として,世界の中のごく少数の研究室で研究が開始されている状況であるが,このような研究の方向性や意義が広く研究者一般に共有されている状況ではない.
例えば,コンピュータやネットワークと接続した培養デバイス(マイクロ流体デバイス等)を利用して細胞や反応系をリアルタイムで制御するデバイス(従来は,このようなデバイスは反応系を単に観察をする,あるいは処理をするために作成されてきたが,そうではなくコンピュータで情報を高度な情報を処理して反応・細胞とインタラクションするデバイス)の構築などが一部の研究室では進んでいる.
例えば,コンピュータやネットワークと接続した培養デバイス(マイクロ流体デバイス等)を利用して細胞や反応系をリアルタイムで制御するデバイス(従来は,このようなデバイスは反応系を単に観察をする,あるいは処理をするために作成されてきたが,そうではなくコンピュータで情報を高度な情報を処理して反応・細胞とインタラクションするデバイス)の構築などが一部の研究室では進んでいる.
インパクト
従来の電気・機械工学の枠組みでは設計が難しい極限環境(高い放射線がある環境)や生体内で動作する,分子情報処理システムや分子ロボットなどの実現が期待できる.また,人工光合成を行う人工細胞や藻類などとの連携により,環境分野への応用も期待できる.
学術的な観点で言えば,生物・人工物のフィードバックを実現する過程で新たな理論的・技術的パラダイムが生まれる可能性があり,20世紀半ばにノーバート・ウィナーが提唱した「サイバネティクス(人工物の制御工学・通信工学などの先に期待される生物と機械を統一的に扱う理論的な体系)」の深化,真の実現が期待される.
学術的な観点で言えば,生物・人工物のフィードバックを実現する過程で新たな理論的・技術的パラダイムが生まれる可能性があり,20世紀半ばにノーバート・ウィナーが提唱した「サイバネティクス(人工物の制御工学・通信工学などの先に期待される生物と機械を統一的に扱う理論的な体系)」の深化,真の実現が期待される.
必要な要素
完成物を構成する個別の材料(生体分子,細胞,電気・機械デバイス)に目を向けた研究は,これまでにも多数存在しており,各分野では技術が大きく発展している状況である.
したがって,これらをシステムとして統合することに主眼を置いて研究を発展させる必要がある.このゴールに対して合目的的な「分子システムの理論体系(サイバネティクス)」や「技術開発(分子システムの構築,デバイスの構築)」を行う必要がある.
したがって,これらをシステムとして統合することに主眼を置いて研究を発展させる必要がある.このゴールに対して合目的的な「分子システムの理論体系(サイバネティクス)」や「技術開発(分子システムの構築,デバイスの構築)」を行う必要がある.