NISTEP注目科学技術 - 2023_W64

概要
常温常圧室温超伝導の実現。ごく最近、Natureに窒素ドープ水素化ルテチウムが低圧力下で室温超伝導になることが報告された。しかし現状では、その真偽は不明であり、現状他のグループでの再現が報告されていない状態である。(なお、既に同Natureに室温超伝導を否定する論文がでる始末である。)
上記の物質が室温超伝導ではない可能性は高いが、近年は高圧下での室温付近の超伝導が報告されているため、近々本当の室温超伝導が見つかる可能性は高いと考えている。
キーワード
室温超伝導 / 超伝導 / 固体物理学 / 物性物理学
ID 2023_W64
調査回 2023
注目/兆し 兆し
所属機関 公的機関
専門分野 ナノテクノロジー・材料
専門度
実現時期 -
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 13 (物性物理学)
分析データ クラスタ 48 (スピントロニクス)
研究段階
まだ研究室レベルでの研究開発であり、かつ再現性も取れていない状態である。あくまでも、材料探索が進んでいるという段階であり、まだまだ現象としても理解できているものではない。ただし、世界中の研究者が追い求めているテーマであるので、ブレイクスルーが起こる可能性も高いと思われる。
インパクト
室温超伝導は社会的な影響力が非常に大きく、特にエネルギー問題の直接的な解決に繋がる研究開発となる。また、超伝導を利用した量子コンピュータ、MRI、送電線など、様々な工学的に有用な製品への波及も期待できる。特に冷却機構が不要、もしくは簡易的なもので済むとなればあらゆる場面で使用できる可能性も秘めている。このように社会生活で、電気を使用している全ての場面に影響があるといっても過言ではなく、室温超伝導のインパクトは絶大である。
必要な要素
まずは常温常圧で室温超伝導を示す物質の探索が重要な課題である。ただし、人間に有害な元素が含まれいる可能性も高く、その影響やリスクを十分に評価する必要がある。また、実際に線材として使用できるかどうかは機械的特性が重要であり、量産化に耐えうる材料としての性能を引き出す研究開発が必須となる。実際に室温超伝導が見つかったとしても、最初の物質がそのまま実用化に耐えうるようなものではない可能性が高いので、類似の物質を探索する必要があると考えられる。このような背景から、超伝導材料の探索と評価ができる体制を企業も有しておくべきであると考える。