NISTEP注目科学技術 - 2023_W21
概要
「持続可能な農業の推進に向けた緑肥の活用」を挙げる。作物生産には窒素肥料が欠かせないが、その産生はハーバーボッシュ法を用いており、ナフサを主とした化石燃料に依存している。そのため、使い続ければ温室効果ガスの二酸化炭素を排出し続けることになる。その一方で、窒素固定する根粒菌を共生することができるマメ科植物を緑肥として使用することで、窒素肥料のための化石燃料の利用を低減、もしくはゼロにすることができる。現在は、肥料の価格よりも種子の価格の方が安いため、生産者の立場においても利点が大きい。世界ではCarbon creditと同様にNitrogen creditの議論がなされており(https://www.nature.com/articles/s41586-022-05481-8)、作物生産における緑肥の積極活用が重要と考える。
キーワード
持続可能 / 二酸化炭素排出削減 / 緑肥 / 根粒菌 / 作物生産
ID | 2023_W21 |
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調査回 | 2023 |
注目/兆し | 兆し |
所属機関 | 公的機関 |
専門分野 | ライフサイエンス |
専門度 | 中 |
実現時期 | - |
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) | 41 (社会経済農学、農業工学) |
分析データ クラスタ | 50 (農業・森林) |
研究段階
農業現場で実際に緑肥活用が進められているが、それに適応する品種の育成等は全く進められておらず、現場が手探りの状態である。緑肥の育種や採種については、日本ではほとんど実施されていない。
インパクト
緑肥活用により農業における化石燃料の使用量を低減できれば、SDGsの達成に大きく貢献できる。
必要な要素
緑肥活用における課題としては、窒素肥料の過少や過多などによる作物生産の不安定性がある。土壌に投入される窒素が少なければ作物の生育は悪く、逆に多すぎれば倒れる(水稲の場合は食味が落ちる)という問題がある。そうした状況でも安定して収量確保できる作物生産技術が必要であり、その一つとして作物品種育成がある。窒素利用効率を高めるような遺伝子を導入したり、窒素が多くても倒れない品種の育成は重要と考える。