NISTEP注目科学技術 - 2023_W7
概要
生体イメージングは,生命科学の研究開発の根幹をなすものであるが,現状は米国の圧倒的技術のため,日本では,この製品を使って研究している.つまり,このままでは日本の技術は常に後進しても仕方がない状況である.
一方で,生体内深部可視化に関わるイメージング技術は日本が欧米を圧倒しているにも関わらず,その育成にはとても消極的な印象が拭えない.特に先端材料開発に対する育成は,JSTも消極的である.一昨年米国が発表した,人造臓器をヒトへ移植した試みは,脳死を待たずに,免疫にも配慮した画期的な技術の試みであるが,その研究を支えるためにはイメージングが鍵となる.哺乳類生体内物質を使った,遺伝子組換えを要しないイメージング技術の創製と応用は,将来的にヒトの超精密診断(1細胞診断)への期待がかかる.
一方で,生体内深部可視化に関わるイメージング技術は日本が欧米を圧倒しているにも関わらず,その育成にはとても消極的な印象が拭えない.特に先端材料開発に対する育成は,JSTも消極的である.一昨年米国が発表した,人造臓器をヒトへ移植した試みは,脳死を待たずに,免疫にも配慮した画期的な技術の試みであるが,その研究を支えるためにはイメージングが鍵となる.哺乳類生体内物質を使った,遺伝子組換えを要しないイメージング技術の創製と応用は,将来的にヒトの超精密診断(1細胞診断)への期待がかかる.
キーワード
in vivo光イメージング / 近赤外発光 / 生物発光 / 中大型動物
ID | 2023_W7 |
---|---|
調査回 | 2023 |
注目/兆し | 兆し |
所属機関 | 大学 |
専門分野 | ライフサイエンス |
専門度 | 高 |
実現時期 | - |
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) | 90 (人間医工学) |
分析データ クラスタ | 6 (分子生物学/診断・治療) |
研究段階
ホタル生物発光を利用したin vivo光イメージングでは,近赤外光を実現し,ミニブタの肝臓にあるがん細胞を体外から可視化することに成功している.近赤外材料はすでに販売されており,実際にヒトの細胞でブタ体内での臓器製造の研究に資する準備はできている.
また,これに資する新たな材料の創製(市販化)も進み,条件によって使い分けることもできる程度に進んでいる.
一方,マウス生体内物質と人工発光基質が発光を示す新たな系が発見され,マウス生体内物質の特定が進められている(研究室レベル).これが特定されれば,相当するヒト生体内物質と人工発光基質で発光が再現できるようになろう.
これが実現すれば,ヒト生体内で,in vivo光イメージングができるようになる.
また,これに資する新たな材料の創製(市販化)も進み,条件によって使い分けることもできる程度に進んでいる.
一方,マウス生体内物質と人工発光基質が発光を示す新たな系が発見され,マウス生体内物質の特定が進められている(研究室レベル).これが特定されれば,相当するヒト生体内物質と人工発光基質で発光が再現できるようになろう.
これが実現すれば,ヒト生体内で,in vivo光イメージングができるようになる.
インパクト
ヒト生体内で,in vivo光イメージングができるようになると,原理的には1つの細胞を体外から可視化できるようになる.これにより,現状では見逃してしまっている微小転移癌を可視化することができるようになろう.研究室の動物実験では,マウスの肺にあるたった1つのがん細胞の可視化ができている.発光材料的には5 cm程度の肉厚は透過することができているので,この精度を高めることができれば,同様にヒトの生体内深部可視化も可能ではないかと考えられる.これは精度が高いとされるMRIに比しても桁違いに精度が高い診断技術になり,臓器に合わせた発光材料の血中投与で,体外から微小転移を可視化できる可能性があり,開腹に比して,被侵襲性も大変低い.人工臓器製造とヒトの超精密診断に資するこの技術は,近未来の医療に確実に革新をもたらすであろう.
必要な要素
哺乳類の生体内物質を使ったイメージング技術のさらなる進展が必要であろう.またいずれも日本の現状の倫理規定では難しい研究もあるので,その改定が必要であろう.また,すでに行なっている豚のイメージングでは,獣医系の大学では試行できず,動物病院を借りて行なった.このような先端研究に二の足を踏む学術界の心的環境も技術開発には憂慮する点であろう.