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NISTEP注目科学技術 - 2023_E631

未だ見ぬ「将来世代」の考え方や利益を現代の意思決定に取り込むことにより、現世代と将来世代のトレードオフ・利害対立を乗り越えた持続可能な意思決定や行動を生み出す社会の仕組や社会技術をデザインする研究分野。
特に、未だ見ぬ将来世代を仮想的に現代に創出する方法（「仮想将来世代」と呼ばれる）によって、世代間利害対立を乗り越えた意思決定や、行動、新しいイノベーションの方向性をデザインすることが可能になりつつある。

（参考文献・情報）
http://www.cfi.eng.osaka-u.ac.jp/hara/research.html
http://www.cfi.eng.osaka-u.ac.jp/fd-research/practices.html

　現代社会の様々な課題（気候変動問題、資源エネルギー問題、財政、インフラの維持管理など）は、将来世代の利益（あるいはコスト）にも関わりうる長期的なサステイナビリティ問題である。その一方で、未だ見ぬ将来世代の利益を考慮した意思決定を現代世代で実施することは困難である。このことがせサステイナビリティ問題の解決を阻む最大の要因だと言える。そのため、将来世代の利益を現代に取り込むための仕組みや技術が求められる。
　この課題に対処するために、将来世代に持続可能な社会を引き継ぐための社会の仕組みをデザインする研究（フューチャー・デザイン）が進んでいる。そのような仕組み（あるいは社会技術）の一つが、「仮想将来世代」と呼ばれるものである。仮想将来世代を社会的な意思決定の場に導入するための研究（経済実験、フィールド実験、産学官ステークホルダー参加による実践）が進みつつある。現在は複数の大学や研究機関で関連研究が進みつつあり、自治体や産業界においても仮想将来世代を導入したビジョンづくりや意思決定の実践、R&D戦略のデザインなどに応用されつつある。
　これらの研究や実践を通じて、仮想将来世代導入の様々な効果が明らかになりつつある。「仮想将来世代」などの仕組みあるいは社会技術を導入することで、人は必ずしも短期的な利得だけを考えるのではなく、社会的合意形成はより将来世代を考慮した、持続可能なものへとシフトすること分かってきた。また、「将来世代」を起点とした本領域は、様々な学術分野（工学、環境学、経済学、政治哲学、脳科学等）にも波及しつつあり、新たな研究分野の創出にもつながりつつある。
　一方で、社会技術としての「仮想将来世代」の社会実装においては、いくつかの課題も見えてきており、これらを克服していくことが今後の研究開発において重要である。

以新たな知（科学基盤・基礎科学）の創出、今後の新たな技術の創出、他分野へ波及効果（新学術分野の創出）、既存産業の発展への寄与、産業競争力の向上、個人・社会の健康・幸福度向上、くらし・ライフスタイルの改善、社会的基盤（都市・地域・交通・インフラ）の強化、地域社会への貢献、社会の福祉・公正性や不平等問題への貢献、環境・エネルギー・資源・生態系への貢献、社会的課題の解決　

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