NISTEP注目科学技術 - 2023_E596
概要
酵素や微生物を利用した生体反応の有機合成化学分野への適用は盛んに行われてきた。しかし、比較的、構造が簡単な有機分子の化学変換に生体反応は適用されているのが現状である。グリーンケミストリーに分類されるこのような反応は、危険な試薬や有機溶媒の利用が不要であるため、廃棄物を最小限に抑える点で優れているが、反応の適用範囲が著しく限られることが問題である。近年、複雑な構造をもつ有機化合物の合成に、酵素や微生物を利用した化学反応が積極的に適用されるようになっている。タンパク質工学や遺伝子組み換え工学などのバイオテクノロジーを駆使する事で、有用な生体反応の基質適用範囲を大幅に拡大するアプローチは、薬などの有用物質の生産を効率化させる、重要な技術である。
キーワード
生体反応 / 酵素 / 微生物 / グリーンケミストリー / バイオテクノロジー
ID | 2023_E596 |
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調査回 | 2023 |
注目/兆し | 注目 |
所属機関 | 大学 |
専門分野 | ライフサイエンス |
専門度 | 高 |
実現時期 | 10年以降 |
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) | 38 (農芸化学) |
分析データ クラスタ | 31 (環境化学) |
研究段階
バイオテクノロジーと有機合成化学にまたがるこの研究分野の人口は決して多くない。そのため、研究の進展には時間が掛かると予想される。研究室レベルでは、複雑な構造をもつ有機分子の合成に生体反応を組み合わせることが可能になっており、論文発表もされている。一方で、化学反応として一般性については、論文から読み取れることは少なく、特定の企業の興味に沿うことはできるであろうが、例えば創薬研究や医薬品生産で一般的に用いられる手法として受けいられるには、ブレイクスルーが必要であろう。
インパクト
酵素や微生物を利用した生体反応を、高い一般性をもって化学反応として進化させる事ができれば、SDGsにマッチした有用物質生産法として、大きなインパクで社会に受け入れられると予想できる。
必要な要素
バイオテクノロジー、有機合成化学の両分野のさらなる進展が、両分野の専門技術の単純化を促進する。技術が単純化することで、専門分野にとらわれずこの融合領域の研究者人口が増え、独創的な研究が進展するはずである。