NISTEP注目科学技術 - 2023_E594

概要
ゲノム解析による近交弱勢のメカニズム解明である。近交弱勢は、近親交配を繰り返すことにより有害遺伝子が発現しやすくなり、繁殖や成長に悪影響をもたらすことである。絶滅危惧種の保全や育種選抜の際にしばしば大きな問題となる。しかし、近交弱勢は、その種や個体によって発現メカニズムが大きく異なっているため、近交弱勢のメカニズムやリスクの解明は非常に難しい。
キーワード
近親交配 / 絶滅危惧種 / 次世代シーケンサー / ゲノム
ID 2023_E594
調査回 2023
注目/兆し 注目
所属機関 大学
専門分野 環境
専門度
実現時期 10年以降
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 39 (生産環境農学)
分析データ クラスタ 51 (生物生態・多様性)
研究段階
現時点では、次世代シーケンサーの普及によって、ゲノムの決定された生物における近交弱勢のメカニズムについて、ごく一部が解明されている。しかし、近交弱勢をもたらす潜在的な有害遺伝子の候補は無数に存在するため、まだごく一部が解明されているに過ぎない。今後は、こうした研究事例を積み上げていくとともに、近交弱勢が起こるリスクを定量化する必要がある。
インパクト
近交弱勢のメカニズムを理解することで、家畜や野菜などの育種において近交弱勢による形質の劣化を未然に防ぐことが期待できる。また、絶滅危惧種の保全において、近交弱勢を防ぐための保全施策が可能となる。
必要な要素
先述の通り、近交弱勢の発現メカニズムの解明事例の蓄積が必要となる。しかし、ゲノムレベルの研究となるため、解析のコストが非常に大きい。今後は、より多くの研究者が参画するとともに、近交弱勢を防ぐための一般側を発見する必要がある。