NISTEP注目科学技術 - 2023_E575

概要
現在、化石形成メカニズムすなわち天然コンクリーション生成メカニズムの工学的応用が注目されている。化石は、炭酸カルシウム(カルサイト)の塊、いわゆるコンクリーションの中から発見されることが多い。このコンクリーションは、長期間にわたって太古の地球上の生物の微細な形態までも、朽ちることなく保存しており、このコンクリーションの保存能力の高さは非常に魅力的である。この天然のコンクリーションの形成メカニズムは、日本各地の化石の地質学的、岩石鉱物学的、地球化学的なデータと、室内実験や物理化学シュミレーションに基づく基礎科学研究から、基本原理が明らかになっている。
現在、この新たに発見した原理をもとに、人工的にコンクリーション化を促進するためコンクリーション化剤が開発され、さらに、地下岩盤の割れ目補修材としての可能性の評価に取り組んでいる状況である。近い将来、地層処分やCCSなどの地下利用のための地下岩盤の補強や割れ目補修への活用、老朽化した道路、橋、トンネル、下水道、港湾などの補修・補強・長寿命化などインフラ強化への活用が期待される。
キーワード
コンクリーション / 化石形成メカニズム / コンクリーション化剤 / 地下岩盤 / 炭酸カルシウム
ID 2023_E575
調査回 2023
注目/兆し 注目
所属機関 大学
専門分野 宇宙・海洋・科学基盤
専門度
実現時期 5年以降10年未満
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 31 (原子力工学、地球資源工学、エネルギー学)
分析データ クラスタ 62 (地震・プレート・地層・マントル)
研究段階
天然の炭酸塩コンクリーションの形成メカニズムは、この10年で、地質学的、岩石鉱物学的、地球化学的なデータと物理化学シュミレーションから、基本原理が明らかになっている。この新たに発見した原理をもとに、人工的にコンクリーション化を促進するためコンクリーション化材が、大学研究室と企業ですでに共同開発されている。現在は、地下坑道などの実験サイトで、開発したコンクリーション化材を使った地下岩盤の補修の実験が進められている。また、コンクリーション化材による道路やトンネルなどの社会基盤の補修の実験も開始されている。
インパクト
非常に幅広い面で、国内的にも国際的にもインパクトが期待される。地層処分やCCSなどの地下利用のための地下岩盤の補強や割れ目補修への活用は、社会の安全・安心の維持・向上に、老朽化した道路、橋、トンネル、下水道、港湾などの補修・補強・長寿命化は、社会的基盤の強化に貢献できる。この技術への国際的な注目も高くなっており、技術が確立すれば、国際社会への貢献も大きい。地層処分などに関する国際的な政策を、日本が主導して推進していくことも期待される。
必要な要素
天然の炭酸塩コンクリーションと天然の鉄コンクリーションの形成メカニズムは、これまでの自然科学の基礎研究から、基本原理は明らかになっている。一方、さまざまな環境において、コンクリーション化技術を幅広く利用していくためには、基本原理の理解だけでは不十分であり、様々な自然環境におけるコンクリーション化の詳細なメカニズムの解明が、今後の幅広い分野での実用化に繋がると考えられる。自然界のコンクリーションに関する基礎研究のさらなる深化が、今後の発展の鍵となると考えられる。