NISTEP注目科学技術 - 2023_E574

概要
大規模かつマルチモーダル情報に対応する広義のAIモデルによる、高度な意思決定をサポートする対話型の情報集約・要約技術。
特に、(1)リアルタイムで世界中の最新の情報へアクセス可能であること、(2)情報源や情報そのものの信頼性に基づいた情報集約が行えること、(3)常識・知識を活用する多段推論により単純な情報の提示に留まらず高度な推論の結果が得られること、(4)自然かつ自由度の高い入出力機構を有し極めて優秀な人間のエージェントとやりとりするように利用可能なこと、を特徴として挙げる。
キーワード
人工知能 / 大規模言語モデル / マルチモーダル / 対話 / 要約
ID 2023_E574
調査回 2023
注目/兆し 注目
所属機関 大学
専門分野 情報通信
専門度
実現時期 5年以降10年未満
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 61 (人間情報学)
分析データ クラスタ 46 (データサイエンス/機械学習・AI)
研究段階
(1)についてはWeb検索エンジンのインデックス利用という観点では既に実用されているが、IoTのレベルではWebのように広範に取得できるようにはなっていない。ただ特定目的でのIoT情報収集は応用レベルまで進んでいる。即時性のある形での取得には情報インフラ整備も含めて10年程度の時間は必要と考えられる。
(2)は情報検索や自然言語処理で注目を集めつつある研究領域であるが、今後想定される不正な情報による情報源の汚染への対処等も含めて新たな基礎研究が必要とも考えられ、5年程度の時間は必要。
(3)は自然言語処理を中心に研究が進められており、今後比較的短期間(5年以内)で一定の枠内では実用的に動作する水準に達すると期待する。
(4)はChatGPTの登場によりこの半年ほどで急速に注目を集めており、様々な応用サービス・プロダクトが生まれつつある。こうしたノウハウの蓄積により、2-3年のうちには一定の水準に達すると期待する。そこから多様なユーザへの適応、上記他技術との連携を含めて考える必要はある。
インパクト
- いわゆる「アナリスト」の業務の多くが自動化され、高水準の集約された情報を簡便に得ることができるようになるため、ホワイトカラー労働の質が大きく変化し、情報を集める・まとめるという作業の比重が大きく下がり、何に注目するかという思考やアイデアのような人間の知恵やひらめきがより重要になっていく。
- 業務や生活の様々な場面での効率が大きく向上し、特に成功や失敗の様々な蓄積により問題を未然に防げる場面が増え、人間は新たな問題への対処に集中できるようになる。
- 一方で個人や集団の情報が丸裸になりやすくなること、既存の社会的バイアスの影響の払拭が難しくなり得ること、大きな資本により情報がコントロールされる懸念が強まること、等様々な課題を生じる可能性もある。
必要な要素
必要な要素
- 広範かつ低レイテンシなネットワークインフラの整備
- 大規模かつ高速な計算資源、特に深層学習向けのもの
- 人工知能・機械学習を専門とする研究者、ソフトウェアエンジニア、プロダクトマネージャ等の人材の拡充と、そのための教育環境・インフラの持続的発展
- 情報セキュリティやプライバシー保護と情報活用の利便性を両立される機械学習技術

留意すべき点
- 個人情報可視化による便益とリスクのトレードオフ
- サービス提供者のドミナント化