NISTEP注目科学技術 - 2023_E568

概要
1.アルミニウム製錬における不溶性電極
アルミニウム製錬においては、原料とするAl2O3から金属アルミニウムを製造する工程でCO2を多量に排出する。Al2O3はAl3+とO2-の状態で溶融塩に溶解する。Al3+はカソードで電子を受け取り金属アルミニウムとして析出すると同時に、炭素アノードでは、O2-が電子を放出しながら炭素と反応してCO2を生成する。この炭素アノードの代わりとなる、不溶性の電極の開発が期待される。これによりCO2フリーの金属アルミニウムが製造可能となる。現時点でも、いくつかの会社がその基礎技術を開発しているが、電極の安定性、エネルギー効率、製造量などにおいて課題がある。今後の研究が期待される。
2.CO2キャプチャー
溶融塩中でのCO2の電気化学的還元法を用いて、排出されたCO2を炭素原料に戻すというアプローチは2010年頃から盛んに行われている。今後この技術がさらに注目を集める可能性がある。
3.硫化反応を利用するリサイクルプロセスの構築
金属元素を含む鉱石中では、金属は酸化物や硫化物の状態で存在する。硫化物で存在するCuなどは、その金属Cuの製造プロセスでは、反応においてSO2が生成し、CO2は排出されない。酸化鉱に対しても硫化処理を施すことによって、CO2の排出を大幅に低減するプロセスフローを構築できる可能性がある。
キーワード
リサイクル / 溶融塩 / 製錬 / 電気化学
ID 2023_E568
調査回 2023
注目/兆し 注目
所属機関 大学
専門分野 エネルギー
専門度
実現時期 5年以降10年未満
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 26 (材料工学)
分析データ クラスタ 11 (理化学/エネルギー・脱炭素)
研究段階
-
インパクト
CO2排出量の低減に大きく貢献する。
必要な要素
エネルギー効率と、処理できる物質量を合わせて評価しながら、材料開発、反応開発を進める必要がある。面白い「反応」や「材料物性」を追いかけるような研究とは質が異なる。