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NISTEP注目科学技術 - 2023_E550

ChatGPTをはじめとする対話型AIとその周辺技術群

Open AIの取り組みをきっかけとして、深層学習と強化学習が新しいブレイクスルーを生み出した。GPT-4では、主要な国々の自然言語に限らず、絵や音楽を生成するといったより汎用性の高いAIへの発展を遂げている。Microsoft社が一兆円の価値を提示したが、まさしくアメリカの民間企業の技術が世界を書き換えたきっかけであるだろう。Googleはその煽りを受けて、一時株価が暴落するほどに追い込まれ類似サービスであるBard提供を促され、Bloombegはヘッドラインユースでその動向発信しながらも数ヶ月後にはBloombergGPTといった金融業界特化型の関連技術を打ち出してきた。日本はその流行乗っかり、各社が自社サービスに組み込むことを始めている。対話型AI、広くは生成AIには高性能のGPUも必要であり、NVIDIAがさらなる成長を市場に示した。Metaらはディプロマシーゲームと知った外交や交渉が絡む問題に対して、GPTと同じ技術であるTransformerや深層強化学習が人間相当のパフォーマンスが出ることを示し、それに追随するようにGoogleらは自動交渉のタスクに対して大規模自然言語モデルによる報酬関数設計、5月末にMaxPlank InstituteからはGPT-3からGPT-4までを使った囚人のジレンマ問題や協力ゲームへの適用可能性を示し始めている。東大の松尾教授は真っ先にChatGPTが与えるインパクトを示し、それを社会の合意形成といった応用に対して京大の伊藤先生らが関連調査を行なっていた。産総研やNECは対話型の一つである自動交渉AIに対して深層強化学習を用いた技術も最難関国際会議で採択されている。これらを医療、製造、物流、自動運転、ロボット産業など社会基盤に適用する試みがすでに始まっている。Microsoft製品群にCopilotとして導入されることも告知されており、すでに全ての働き方が変革を求められている。文部科学省としては、特に教育関連に対する知識詰め込み型からの変更を余儀なくされるはずだ。まずは東大をはじめとするChatGPTの利用に関する大学側の対応の差異も興味深い。

すでに実用目前のフェーズであるが、並行して研究開発が行われている状況である。これは半導体技術のチップ開発に類似しているだろう。ChatGPTをきっかけとして、類似技術がAPIを介してほとんど全てのサービスや技術が接続されることが容易の想定される。単体技術としてではなく、技術群として振る舞える点が素晴らしいが、さまざまな領域への適用に関して日本が遅れを取らないようにすべきだ。

インターネットが登場して世界が変わったのに相当するインパクトになるであろう。つまり、変化を受けないサービスを探す方が困難になる。単体の機械学習や最適化、技術者向けのローカル技術とは一線を画しており、誰でも簡単に使え、さらに各業業界に合わせたファインチューニングが可能であることも素晴らしい点である。個々人が最高レベルのAIを使えるようになるだけでなく、それらを有機的に組み合わせたサービスが提供されることによる市場への影響は計り知れない。

まずは使ってみることが大切だと考えております。その自由な取り組みを過去の踏襲や法律、技術や学問領域などで邪魔しないことが必要です。データによって成長するAI関連する技術に対して、規制や法的なルールを科すことは阻害要因にしかなりません。その上で並列して安全な取り決めを国際レベルでバランスよくやることは政府の重要な仕事であると考えております。逆に過度な法整備で押さえつけてしまうと、AI関連の技術格差はさらに広がり、インターネットやSNS、スマートフォンといったサービスのように全て海外製として抑えられることになるでしょう。霞ヶ関の資料作成に真っ先に利用して、優秀な若手の業務負担を減らしその効率化を世論に示すことは効果的ではないかと思います。また、大学や研究機関、大手企業といった個別組織ではなく、共同開発や研究といった取り組みも重要になってくると考えております。日本にありがちなマニアックな技術的なこだわりだけでなく、サービスとしての目標、お金に変える仕組み、それによって生じるルール設計は初動ほど情報交換をすべきだと感じます。ゲームやエンタメといった個々人の趣味への適用も新たな着眼点を提供してくれるかもしれません。国頼りの資金でなく、数兆円レベルの資金源をどのように継続していくのか、その観点がなければ単発的な開発で終わってしまいますので、しっかり民間側が株式市場を見据えて取り組むべきだと思います。もちろん、その関連技術の人材育成や新規参入を受け入れるOpenな環境は日本の苦手領域に見えるので、アメリカなどの諸外国との連携が必要だと感じます。