NISTEP注目科学技術 - 2023_E547

概要
欧州では、ボローニャ・プロセスにより、欧州高等教育圏の確立が目指されている。その一環として、多種多様な学位・資格を承認・評価し、学習者のクロス・ボーダーを円滑にするための施策が展開されている。歴史的・社会的・制度的背景の異なる国や地域の間で学位・資格を相互に承認・評価し、入学者選抜や入学後の教育等に活用する上で、それらの比較可能性や同等生を担保するための方策が必要となるが、さまざまな機関・企業がその枠組みや関連するサービスを開発・提供している。今後は、チューニングやマイクロ・クレデンシャル等の関連する施策の進展により、より精度の高い学習成果や学習歴の比較が可能になると考えられる。
キーワード
資格承認 / FCE (Foreign Credential Evaluation) / 入学者選抜の公平性・公正性 / 評価の妥当性・信頼性 / 多面的・総合的評価
ID 2023_E547
調査回 2023
注目/兆し 注目
所属機関 大学
専門分野 人文・社会科学
専門度
実現時期 10年以降
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 9 (教育学)
分析データ クラスタ 22 (ダイバーシティ)
研究段階
さまざまな教育機関、資格承認機関、企業等が多様な学位・資格間の比較可能性・同等生を担保する枠組みを開発・運用しているが、普遍的・統一的な方法が存在するわけではない。また、欧米諸国が先行しており、アジア等の国や地域はそれに追随する状況となっている。資格承認のみによる学位・資格の比較可能性・同等生の確保には限界があるため、入学者選抜等で利用する際には、その他の方法を組み合わせることによりそれを補足し、評価の妥当性・信頼性を高める必要がある。
インパクト
国内外の多種多様な学位・資格を承認・評価する枠組みを開発し、それを入学者選抜や入学後の教育に活用することにより、高等教育の質保証が実現できる。また、日本国内でも、将来さまざまな機関や企業が資格承認や情報提供に関するサービスを展開することになり、大学は目標や戦略に応じて情報を取捨選択できるようになることが予想される。それにより、多様な背景をもつ国内外の志願者(外国人留学生や社会人だけではなく、日本人生徒を含む)を学習成果や学習歴に基づき適切に評価することが可能となる。その結果、高大接続改革における多面的・総合的評価や国際入試の課題である、評価の妥当性・信頼性の向上と入学者選抜の公平性・公正性の確保、入学後の教育との整合性・一貫性の実現につながる。
必要な要素
高等教育のグローバル化が現在よりもいっそう進展し、国際入試の募集人員の規模が拡大することが必要な要素といえる。現在の国際入試(私費外国人留学生入試や帰国子女入試等)は、募集人員が少なく(若干名)、それゆえ志願者のもつ資格や学習歴の比較可能性や同等生が問題にされることは少なく、評価の妥当性・信頼性及び入学者選抜の公平性・公正性が十分に議論されているとは言い難い状況にある。今後、新自由主義的な政策背景の下、グローバル化、情報化、市場化、少子化、大学の国際化等が進むことにより、日本においても外国の学位・資格の承認・評価の重要性が増すことが予想される。