NISTEP注目科学技術 - 2023_E531
概要
抗菌ペプチドを用いた耐性菌に対する新抗菌薬の開発。
人間の寿命はここ100年で二倍になった。その目覚ましい健康状態の改善に大きな役割を担ったのが抗生物質の発見である。結核・黒死病などのかつては死の病とされた病気は、現在では抗生物質で治療可能となった。しかし、近年、耐性菌という抗生物質が効かないバクテリアが出現し、社会問題となっている。2019年のCDCレポートによると、アメリカだけで年間280万人の感染者、3万5千人の死者が出ており、この数字は年々増え続けている。バクテリア感染は一般的に致死率が高いため、コロナと似たような感染率で致死率のもっと高いパンデミックが近いうちに来るのではと危惧されている。
そこで耐性菌に効く新・抗菌薬開発が必要となっている。さまざまなアプローチの中で、すでに一定の成果を上げているのが抗菌ペプチドを用いた薬である。抗菌ペプチドは人間がバクテリアに感染した時に免疫機能として作り出す天然の抗菌薬である。バクテリアの脂質(DNAに直接組み込まれていない)をターゲットとするため、突然変異によって回避しずらく、耐性を持ちにくい。この機能を模倣、パワーアップさせて薬が作れないかという研究が長年されている。
人間の寿命はここ100年で二倍になった。その目覚ましい健康状態の改善に大きな役割を担ったのが抗生物質の発見である。結核・黒死病などのかつては死の病とされた病気は、現在では抗生物質で治療可能となった。しかし、近年、耐性菌という抗生物質が効かないバクテリアが出現し、社会問題となっている。2019年のCDCレポートによると、アメリカだけで年間280万人の感染者、3万5千人の死者が出ており、この数字は年々増え続けている。バクテリア感染は一般的に致死率が高いため、コロナと似たような感染率で致死率のもっと高いパンデミックが近いうちに来るのではと危惧されている。
そこで耐性菌に効く新・抗菌薬開発が必要となっている。さまざまなアプローチの中で、すでに一定の成果を上げているのが抗菌ペプチドを用いた薬である。抗菌ペプチドは人間がバクテリアに感染した時に免疫機能として作り出す天然の抗菌薬である。バクテリアの脂質(DNAに直接組み込まれていない)をターゲットとするため、突然変異によって回避しずらく、耐性を持ちにくい。この機能を模倣、パワーアップさせて薬が作れないかという研究が長年されている。
キーワード
ペプチド創薬 / 耐性菌 / 抗菌ペプチド
ID | 2023_E531 |
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調査回 | 2023 |
注目/兆し | 注目 |
所属機関 | 大学 |
専門分野 | ナノテクノロジー・材料 |
専門度 | 高 |
実現時期 | 5年以降10年未満 |
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) | 58 (社会医学、看護学) |
分析データ クラスタ | 60 (感染症・ワクチン・治療薬) |
研究段階
抗菌ペプチドベースの塗り薬はすでに数種類臨床で使われているが、血中に打ち込んで耐性菌を倒すために使われているのはポリミキシンのみである。これは耐性菌に対する最後の砦として使われている非常に重要な薬だが、40%の患者で腎不全が起こる非常に副作用の高い危険な薬である。抗菌ペプチドを用いた薬が汎用的に使用されないボトルネックは以下のものである。
1 副作用が高い(選択性が低いためバクテリアを殺す濃度で人間にも危害が出る)
2 一般的なペプチド創薬の問題(合成の値段が高い、体内での滞留時間が短い、ペプチドは食べ物なので胃酸で消化されるため口径薬が作れない)
1 副作用が高い(選択性が低いためバクテリアを殺す濃度で人間にも危害が出る)
2 一般的なペプチド創薬の問題(合成の値段が高い、体内での滞留時間が短い、ペプチドは食べ物なので胃酸で消化されるため口径薬が作れない)
インパクト
耐性菌パンデミックに対抗する技術となりうるため、何億人の命を救う可能性がある。
必要な要素
Q5であげた問題点に対する解決策となりうる要素が以下のものである。
1 選択性を上げるために協奏効果(コオペラティブ効果)を使う。これは異種のペプチドを混ぜた時に発現するスーパーパワーのことであり、すでに、異種の抗菌ペプチドを混合することで殺菌効果が上がったり、人間細胞に対する毒性が下がったりするデータが報告されている。この効果を利用することで、効能が高く、副作用が低い薬を作れる可能性がある。
2 コロナで主流となったRNAワクチンはペプチド創薬を推進する。今後ペプチドやタンパク質ベースの薬は、ペプチドを血中に打つのではなく、その元となるRNAを打つことで、長期間ペプチドの高濃度を体内で保つことができる。合成の値段の問題もなくなるため、RNAワクチンと組み合わせることにより問題2のほとんどが解決する可能性がある。
1 選択性を上げるために協奏効果(コオペラティブ効果)を使う。これは異種のペプチドを混ぜた時に発現するスーパーパワーのことであり、すでに、異種の抗菌ペプチドを混合することで殺菌効果が上がったり、人間細胞に対する毒性が下がったりするデータが報告されている。この効果を利用することで、効能が高く、副作用が低い薬を作れる可能性がある。
2 コロナで主流となったRNAワクチンはペプチド創薬を推進する。今後ペプチドやタンパク質ベースの薬は、ペプチドを血中に打つのではなく、その元となるRNAを打つことで、長期間ペプチドの高濃度を体内で保つことができる。合成の値段の問題もなくなるため、RNAワクチンと組み合わせることにより問題2のほとんどが解決する可能性がある。