NISTEP注目科学技術 - 2023_E523

概要
不揮発性メモリを主記憶としたシステムソフトウェアの研究開発が期待される。現在のコンピュータは揮発性メモリを主記憶として用いている。揮発性メモリは電源断によりデータが消失するため、データを永続化するために二次記憶を用いている。二次記憶にはHDDやSSDがあり、プログラムも二次記憶に保存されている。プログラム実行時には二次記憶から主記憶へプログラムやデータを読み込み、CPUが処理した結果を主記憶に保存し、永続化の際に二次記憶に書き出す。一方で不揮発性メモリは電源断によりデータが消失しない。このため、単純に考えれば二次記憶は不要になる。このため、コンピュータの起動処理や終了処理において、データの消失を防ぐために二次記憶にデータを保存する処理が不要になる。また、プログラム実行時やデータ読み込み時に二次記憶からの読み出し処理が不要になる。これにより、計算機の構成パーツ削減によるコストダウン、電力消費削減、処理時間短縮が期待できる。現状では不揮発性メモリはストレージシステムに活用されつつあるが、汎用のコンピュータにも搭載されればコンピュータの利用形態も変わる可能性がある。
キーワード
不揮発性メモリ / システムソフトウェア / 半導体
ID 2023_E523
調査回 2023
注目/兆し 注目
所属機関 大学
専門分野 情報通信
専門度
実現時期 5年以降10年未満
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 60 (情報科学、情報工学)
分析データ クラスタ 38 (計算機・電気通信・通信デバイス・量子計算機)
研究段階
一部の各研究室や企業がシステムソフトウェアの研究開発をしている。
インパクト
コンピュータから二次記憶がなくなるということはHDDやSSDが不要になるということであり、パーツ点数削減によりコストダウンと故障率低下が予測される。また、電力消費を抑制できるため、消費電力削減に貢献できる。また、処理時間短縮によりオフィスワークの効率化が期待できる。
必要な要素
半導体製造工場と公的研究機関や大学が緊密に連携できる環境づくりが重要である。研究機関や大学では半導体の試作は困難であるため、システムソフトウェア分野の研究者がいたとしても容易には研究開発を進められない。また、企業との共同研究に結びつけるためには半導体設計者との連携も必要である。このため、半導体製造企業、半導体研究社(産学官問わず)、およびシステムソフトウェア研究者(産学官問わず)を繋ぐ必要がある。これらの分野全体を把握しているである学会が仲介し、三者による連携の場を設けることで研究開発が加速すると予想される。