NISTEP注目科学技術 - 2023_E504

概要
生物多様性と農業生産を両立した景観スケールでの総合的農地管理。
土着天敵を生かした害虫防除は古くから概念として存在し、研究例もあるが、現実的にはほとんどの農業は農薬を多く使用しているため、広く実現されてはいない。しかし、近年、土着天敵による害虫防除や在来の訪花昆虫による作物の花粉媒介などの生態系サービスはデータが蓄積されている。周囲に自然環境が多い景観に位置する農地では、害虫防除の担い手となる土着天敵や訪花昆虫が多いことが分かっているため、在来種による生態系サービスを生かした農業が発展することが期待される。
キーワード
生態系サービス / 生物多様性の保全 / 農業生産
ID 2023_E504
調査回 2023
注目/兆し 注目
所属機関 大学
専門分野 その他
専門度
実現時期 10年以降
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 39 (生産環境農学)
分析データ クラスタ 50 (農業・森林)
研究段階
野外での現象は明らかになっている。現在明らかになっていることは、周囲に林や草原などの自然環境が多い農地では、土着天敵による害虫防除や訪花昆虫による作物の受粉といった生態系サービスを受けやすい、ということである。また、近年はドローンや画像解析などの技術が急速に発展し、害虫被害を受けた場所ピンポイントでの農薬散布などが可能になっている。しかし、概念はある程度確立されているが、私の知る限り、野外ではまだほとんど実践されていない。
今後、農地周辺の景観、農地自体の管理手法の発展、ドローンによるピンポイント農薬散布技術などを組み合わせて、生態系サービスを生かした農業生産と生物多様性の保全の両立を達成することが期待される。
インパクト
環境・生態系への貢献
社会的課題(生物多様性の保全や持続可能な一次産業)の解決
既存産業の発展への寄与
知の創出
農業分野における自然と農業の調和した技術の創出
必要な要素
生物多様性(特に農家)への理解
農地周辺に自然生態系があることの利益とコストの評価
生物多様性が保全された農地での農作物のプレミア
生物多様性が高い農業景観での農業に対する政府による補助金。直接支払い