NISTEP注目科学技術 - 2023_E500
概要
地域コミュニケ―ション学。言語社会学を基盤として、人と人の対話や身振りを含む相互行為を動画によって微視的に分析するインタラクション分析の手法を用い、地域社会における個人、諸アクター、行政等の関係者間の相互関係を可視化していくことにより地域コミュニティにおけるコミュニケーションの実態、課題、促進のあり方を論じる。
キーワード
相互行為 / コミュニケーション / 微視的分析 / 地域コミュニティ
ID | 2023_E500 |
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調査回 | 2023 |
注目/兆し | 注目 |
所属機関 | 大学 |
専門分野 | 人文・社会科学 |
専門度 | 高 |
実現時期 | 5年未満 |
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) | 8 (社会学) |
分析データ クラスタ | 22 (ダイバーシティ) |
研究段階
科研費(挑戦的研究)の助成を得て、共同研究がスタートした段階
インパクト
都市部においても農山村部においても、ソーシャルキャピタルの低下が大きな問題となっている。人口減少、高齢化、過疎化が加速度的に進行する中で高齢者のみならず若年世代の孤立化、ひきこもり、社会とつながる手段の喪失やそれによる経済的困窮、健康の阻害、自殺やDVなど種々の社会的問題を引き起こしている。地域コミュニケーション学は、これら諸問題への社会学、行政学、公共政策学等の従来のアプローチがマクロのフェイズにとどまりがちであったことをふまえ、よりミクロなレベルで、個人と個人の相互行為分析による個人のモチベーションへの変容過程や、これまで見過ごされがちだった地域社会の諸アクター(商店、宅配業者、移動販売の店員など)が住民とのコミュニケーションに果たす役割を可視化し、それらの人的・社会的資源の重層的活用の可能性と処方を行政学や社会福祉学、公共政策学などの学問横断的な視点から新しい学問領域として確立することを目指している。これにより社会的孤立・セルフネグレクト・8050問題等の現代日本社会を根底から揺るがしつつある社会問題の解決に寄与するものである。
必要な要素
純粋に人と人のインタラクション分析という技術的な研究についてはAI技術の活用も含め、すでに蓄積が進みつつあるが、一方でこれを行政や社会福祉の場面で応用していくには個人情報の壁が大きく、行政、福祉機関等関係者の理解と協力が不可欠になっている。一次的な情報収集に当たっては「人の手と足」による地道なフィールドワークと信頼関係の積み重ねが欠かせず、ここが研究の進展にとってボトルネックである。