NISTEP注目科学技術 - 2023_E50
概要
「毛髪一本からの時間軸を付与したイメージング質量分析技術」
現代社会では様々な社会・環境要因によりストレスを抱える人が増え、QOLの低下を招く一因となっている。ストレスは、不安・緊張・抑うつなどの心理的異常にも繋がり、2019年には約9億7000万人もが気分障害を抱えていると報告されている(WHO(2022))。更に、自然災害による被災、コロナ感染拡大など、新たな要因により有病率や重症度がさらに上昇すると予測されている。「健康寿命」に加え、いつまでも社会と主体的に関われる「社会参加寿命」の延伸の実現には、肉体的・精神的な安定は極めて重要である。様々なストレスから誘引される身体・精神的異常などの未病状態を早期発見し、対策を講じる仕組みづくりは喫緊の課題である。
しかし、ストレスの数値化や、ストレスと疾患の紐づけは、アンケート(問診)による主観的評価からの推察、血液検査が主流であり客観的な指標に伴う評価と確定が困難である。すなわち新たなバイオマーカーが求められており、医学のみでなく、分析および化学的情報を統合した数値的・客観的評価アプローチが重要である。
ストレスに暴露された際の生体内の変化を、「いつ」と「何に」の2点で決定する必要がある。しかし、時々刻々血液を採取するのは現実的ではない。なにより「何」をストレス性バイオマーカーとするかも同定されていない。将来的なことも鑑み、視覚的にバイオマーカーを生体のどこから検出するのかということと、時系列に生体変化を科学的に理解するのかが問題の解決となる。そこで毛髪が、日々(「いつ」)の生活での変化(「何」)を反映しているということから上記目標を達成できるサンプルとなる。それが、「毛髪の超高精細イメージング質量分析」である。ナノ微粒子をイオン化支援剤とした、ナノ微粒子支援型レーザー脱離/イオン化(Nano-PALDI)は、毛髪一本の縦切りの切片を空間分解能5マイクロメートルの超高精細に可視化できる。毛髪は伸長していくので、毛先ほど過去を表している。過去をトレースし、健康状態を把握できる新しい技術である。既に、いくつかの毛髪から新規バイオマーカー候補を見出している。
また、食品メーカーも当該技術に興味を持っている。新規機能性成分の効果を証明するのに、被験者の血液ではなく毛髪が使用できるからである。
現代社会では様々な社会・環境要因によりストレスを抱える人が増え、QOLの低下を招く一因となっている。ストレスは、不安・緊張・抑うつなどの心理的異常にも繋がり、2019年には約9億7000万人もが気分障害を抱えていると報告されている(WHO(2022))。更に、自然災害による被災、コロナ感染拡大など、新たな要因により有病率や重症度がさらに上昇すると予測されている。「健康寿命」に加え、いつまでも社会と主体的に関われる「社会参加寿命」の延伸の実現には、肉体的・精神的な安定は極めて重要である。様々なストレスから誘引される身体・精神的異常などの未病状態を早期発見し、対策を講じる仕組みづくりは喫緊の課題である。
しかし、ストレスの数値化や、ストレスと疾患の紐づけは、アンケート(問診)による主観的評価からの推察、血液検査が主流であり客観的な指標に伴う評価と確定が困難である。すなわち新たなバイオマーカーが求められており、医学のみでなく、分析および化学的情報を統合した数値的・客観的評価アプローチが重要である。
ストレスに暴露された際の生体内の変化を、「いつ」と「何に」の2点で決定する必要がある。しかし、時々刻々血液を採取するのは現実的ではない。なにより「何」をストレス性バイオマーカーとするかも同定されていない。将来的なことも鑑み、視覚的にバイオマーカーを生体のどこから検出するのかということと、時系列に生体変化を科学的に理解するのかが問題の解決となる。そこで毛髪が、日々(「いつ」)の生活での変化(「何」)を反映しているということから上記目標を達成できるサンプルとなる。それが、「毛髪の超高精細イメージング質量分析」である。ナノ微粒子をイオン化支援剤とした、ナノ微粒子支援型レーザー脱離/イオン化(Nano-PALDI)は、毛髪一本の縦切りの切片を空間分解能5マイクロメートルの超高精細に可視化できる。毛髪は伸長していくので、毛先ほど過去を表している。過去をトレースし、健康状態を把握できる新しい技術である。既に、いくつかの毛髪から新規バイオマーカー候補を見出している。
また、食品メーカーも当該技術に興味を持っている。新規機能性成分の効果を証明するのに、被験者の血液ではなく毛髪が使用できるからである。
キーワード
ストレス / 可視化 / メンタルヘルス / ナノテクノロジー / 未病
ID | 2023_E50 |
---|---|
調査回 | 2023 |
注目/兆し | 注目 |
所属機関 | 大学 |
専門分野 | ライフサイエンス |
専門度 | 高 |
実現時期 | 5年以降10年未満 |
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) | 58 (社会医学、看護学) |
分析データ クラスタ | 13 (社会医療・看護/生命予後・社会復帰・在宅ケア) |
研究段階
原理・現象が科学的に明らかになった段階
大学と企業で開発している段階
大学と企業で開発している段階
インパクト
在りたい社会を考えた時、健康長寿、社会参加寿命の2つが延伸された社会が望ましい。実現のために、バックキャストすると、ストレスフルな現代社会と来たる超高齢化社会を鑑みた時、肉体的・精神的な安定が重要であることは自明である。ライフサイエンスを研究する立場から現在、我々が取り組むべき課題は、食品機能性成分の新たなる機能発見と、それが生体内で機能することを簡便かつ安全に評価する技術を開発することである。
毛髪一本から現在から過去までのメンタルヘルスが把握できれば、自身のカルテとなり、今、すべき対処法が分かる。最終的に、健康寿命、社会参加型寿命延伸を目指す(SDGs No.3)。その為の、測定技術開発は、複雑な腸管ネットワークと、脳シグナルにおける食成分の役割を解明するだけでなく、生きているヒトからは採取できない腸脳に代わり、毛髪サンプルから全身の機能の理解を提供する(SDGs No.9)。開発された新規機能性サプリメントは、肉体的、精神的安定の確保を「食べる」ことで担うことができる(SDGs No.16)。
毛髪一本から現在から過去までのメンタルヘルスが把握できれば、自身のカルテとなり、今、すべき対処法が分かる。最終的に、健康寿命、社会参加型寿命延伸を目指す(SDGs No.3)。その為の、測定技術開発は、複雑な腸管ネットワークと、脳シグナルにおける食成分の役割を解明するだけでなく、生きているヒトからは採取できない腸脳に代わり、毛髪サンプルから全身の機能の理解を提供する(SDGs No.9)。開発された新規機能性サプリメントは、肉体的、精神的安定の確保を「食べる」ことで担うことができる(SDGs No.16)。
必要な要素
要素技術、アイデアは揃っている。社会参加型寿命延伸の意味をはき違えて、中堅の邪魔する社会的要素(老兵)の排除こそが大事。