NISTEP注目科学技術 - 2023_E492
概要
地球観測衛星による陸上および沿岸域の高い時間的・空間的解像度でのリモートセンシング技術,および情報基盤の発達により,局所からグローバルなスケールでの自然生態系の状態(光合成による炭素吸収,野生生物生息環境など)の精緻なモニタリング,評価,変化予測が実現することが期待される。これらの観測結果は気候変動や人為的インパクトの影響とあわせて評価・解明され,進行する地球環境変動が人類とその生存基盤である生態系の診断を可能とし,即時に必要とされる治療(保全,温暖化対策,気候変動適応)の重要な基盤的情報となる。
地球観測衛星データをこの目的のためにさらに発達・利活用するためには,地上の自然生態系での緻密な観測,およびシミュレーションモデル開発との連動が必須であり,環境や生態系の地理的不均一性がもたらす変動幅を網羅して普遍性の高い観測・監視・予測技術を開発するためには国土を広くカバーするように,気候・生態系とその機能・生物多様性を一元的に観測し,データを準リアルタイムで蓄積・解析し,地上データと衛星データの照合が可能になる情報基盤において蓄積される統合的なシステムが必要とされる。これらの個々の観測は手法や主体が多様であり,またデータ形式も大きく異なることから,調整・統合された形での観測情報基盤は存在していない。しかし多様な観測・データ・モデルが瞬時に統合されることで,「生態系状態の天気図・天気予報」が構築されることで,進行する気候変動および変化する生態系にいち早く対応した環境対策を図ることができると期待される。
地球観測衛星データをこの目的のためにさらに発達・利活用するためには,地上の自然生態系での緻密な観測,およびシミュレーションモデル開発との連動が必須であり,環境や生態系の地理的不均一性がもたらす変動幅を網羅して普遍性の高い観測・監視・予測技術を開発するためには国土を広くカバーするように,気候・生態系とその機能・生物多様性を一元的に観測し,データを準リアルタイムで蓄積・解析し,地上データと衛星データの照合が可能になる情報基盤において蓄積される統合的なシステムが必要とされる。これらの個々の観測は手法や主体が多様であり,またデータ形式も大きく異なることから,調整・統合された形での観測情報基盤は存在していない。しかし多様な観測・データ・モデルが瞬時に統合されることで,「生態系状態の天気図・天気予報」が構築されることで,進行する気候変動および変化する生態系にいち早く対応した環境対策を図ることができると期待される。
キーワード
地球観測衛星 / リモートセンシング / 生態系・生物多様性観測 / 生態系モデリング
ID | 2023_E492 |
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調査回 | 2023 |
注目/兆し | 注目 |
所属機関 | 大学 |
専門分野 | 環境 |
専門度 | 中 |
実現時期 | 10年以降 |
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) | 63 (環境解析評価) |
分析データ クラスタ | 14 (気候) |
研究段階
地球観測衛星による植生リモートセンシングは1970年代より開始され,現在では地球の陸上生態系の地理的分布や季節変化などの観測は世界的に進められている。しかし,近年の地球温暖化・気候変動の進行にともない,世界各地の陸上生態系による炭素吸収量の推定,生態系の分布パターンの変化,生態系に対する乾燥・高温ストレスの診断に関する高い精度での観測が益々重要となっている。
植物の光合成機能は日射や気温,湿度,土壌水分等の環境条件に対して敏感に反応し,これは実験室や野外実験環境では実験的に診断することができる。しかしより広い国土から大陸,グローバルスケールについては,現状では植生が反射する可視光や近赤外光の情報に基づいた生態系状態の診断が行われているが,気象の変化や気候変動に対して敏感に反応する光合成活動のような生物の生理学的プロセスを衛星リモートセンシングによって診断する手法は十分に得られておらず,温室効果ガス観測衛星による観測データに含まれる特定の波長が陸上植生の光合成活動と相関があると知られており,それが指標として利用されるに留まっているが観測頻度および空間解像度に課題がある。
植物の光合成機能は日射や気温,湿度,土壌水分等の環境条件に対して敏感に反応し,これは実験室や野外実験環境では実験的に診断することができる。しかしより広い国土から大陸,グローバルスケールについては,現状では植生が反射する可視光や近赤外光の情報に基づいた生態系状態の診断が行われているが,気象の変化や気候変動に対して敏感に反応する光合成活動のような生物の生理学的プロセスを衛星リモートセンシングによって診断する手法は十分に得られておらず,温室効果ガス観測衛星による観測データに含まれる特定の波長が陸上植生の光合成活動と相関があると知られており,それが指標として利用されるに留まっているが観測頻度および空間解像度に課題がある。
インパクト
衛星リモートセンシング観測および解析技術,情報基盤の発達により,自然生態系の光合成活動を高い時間的・空間的解像度での精緻な監視が実現することが強く望まれる。森林や草原のような自然生態系の光合成活動の詳細かつ準リアルタイムでの観測が実現すれば,今後さらに進行する気候変動が人類およびすべての陸上生物の生活基盤である生態系にもたらす危機を監視することができる。このような情報は野生生物の保全,植物資源の保護,生態系の管理の方策の重要な診断情報となる。
また,国土から大陸スケールでの生態系による光合成活動のモニタリングによって,自然生態系が固定するCO2の算定精度や迅速性も増加し,カーボンニュートラル目標の基盤的情報をフットプリント情報とあわせて得ることができ,環境保全とエネルギー課題の両面に関わる技術となる。
また,国土から大陸スケールでの生態系による光合成活動のモニタリングによって,自然生態系が固定するCO2の算定精度や迅速性も増加し,カーボンニュートラル目標の基盤的情報をフットプリント情報とあわせて得ることができ,環境保全とエネルギー課題の両面に関わる技術となる。
必要な要素
1)高い時間的・空間的解像度をもつ衛星リモートセンシング技術(センサー,衛星)
2)リモートセンシング用センサーの仕様設計に関する生態系生理学的実験システム,気候変動および生態系状態の野外観測施設(多地点)およびその情報ネットワーク
3)生態系・生物多様性観測データの準リアルタイム蓄積,品質管理システム
4)衛星観測データ,プロダクトデータの準リアルタイム配信
2)リモートセンシング用センサーの仕様設計に関する生態系生理学的実験システム,気候変動および生態系状態の野外観測施設(多地点)およびその情報ネットワーク
3)生態系・生物多様性観測データの準リアルタイム蓄積,品質管理システム
4)衛星観測データ,プロダクトデータの準リアルタイム配信