NISTEP注目科学技術 - 2023_E490
概要
AIによる行政事務の遂行の開始または既に行われているAIによる行政事務の範囲拡大という技術面での展開が存在するとともに、それら新たな行政活動に対する規律をいかに整備するかという課題が存在する。例えば、AIによる法解釈の適切性をいかにして保障するのか、AIによって行われた決定が個別具体の事例に沿った判断をできていないとして、担当行政部局の裁量の逸脱・濫用を問うことがいかにして可能か、という疑問があるほか、不確実な情報に基づく機械学習でいたずらに人権を侵害される市民が現れる懸念がある。
キーワード
AI / 情報処理 / 人権保障 / 法的責任
ID | 2023_E490 |
---|---|
調査回 | 2023 |
注目/兆し | 注目 |
所属機関 | 大学 |
専門分野 | 人文・社会科学 |
専門度 | 低 |
実現時期 | 5年未満 |
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) | 5 (法学) |
分析データ クラスタ | 8 (法学) |
研究段階
すでに自治体でのAI活用を総務省が推奨しており、実際にいくつかの分野で活用されている。それに追随するように、法的な取り扱いについての学説の議論も進んでいる。直接AI処理を論点裁判事例などはまだ聞いたことがない。
インパクト
先にQ1で述べたような問題点の解決は、まずAIの利用が有用な事務の範囲とそうでない事務の範囲との区分を明確にする。AIをはじめとするデータ技術の利用は行政の人員不足解消・コスト削減などにつながるとされているが、上記の明確化は、まさに行政の人的資本・コストの適正な規模の把握に貢献するであろう。そのうえで特に地方など行政体制の維持すら困難な地域に適法性を確保したAIの活用が貢献をする余地は十分に存在するものと思われる。
必要な要素
規律の整備といっても様々な手段が考えられ(個別の法改正や包括的な法の制定、ほかに裁量基準のごとく内部基準の充実から行うことも考えられる)、したがっていきなり大上段の方策を検討するのではなく、議論を少しずつ積み重ねる必要がある。また、既に技術を導入している自治体から意見を聞く必要があるものと思われる。