NISTEP注目科学技術 - 2023_E489
概要
私の専門は宇宙工学だが,現在最もホットな話題はアメリカを中心に我が国も含む国際協力で進んでいる月面開発(Artemis計画)である.月面開発は,学術的な意義に加え,究極的には月面での資源開発,生産活動,発電,人類の移住等を通し,地球の環境負荷低減とサステナビリティにつながるものである.
その中で,月面における地産地消の検討(ISRU, In-Situ Resource Utilization:資源のその場利用)が急速に進んでいる.つまり,地球からあらゆるものを輸送してきたこれまでの宇宙開発から脱却し,月面で採取できるものを有効に使う概念である.中でも月に存在する水が注目されている.水は人間の飲用の他,電気分解により水素と酸素を得て低温液化貯蔵して利用される.燃料電池の探査車の駆動,ロケット燃料としての利用,人間の呼吸のための酸素源などの検討が進んでいる.特に液体水素に関しては,これまでもロケット燃料として利用されてきたが,宇宙における更なる液体水素利用の拡大と,地上における脱炭素に向けた水素エネルギー社会の実現と密接にリンクした研究開発が重要となっている.
液体水素の長期貯蔵については,既存ロケットの能力向上のみならず,月面での水素燃料の補給の実現に必要な技術であり,宇宙開発の自在化・効率化に貢献する.更に,脱炭素に向けた液体水素を搭載する自動車,航空機,タンカー等へも利用でき,その波及範囲は極めて広い.宇宙エンジンについても従来の液体水素ロケットエンジンに留まらず,水素の特性を有効利用した新たなエンジンが求められている.この一つの解が小惑星探査機はやぶさで利用されたイオンエンジンをはじめとする電気推進であり,従来は高価かつ地球でしか採取できないキセノンガスが利用されてきたが,これを水素燃料に代えることは宇宙開発において多大なメリットがある.
その中で,月面における地産地消の検討(ISRU, In-Situ Resource Utilization:資源のその場利用)が急速に進んでいる.つまり,地球からあらゆるものを輸送してきたこれまでの宇宙開発から脱却し,月面で採取できるものを有効に使う概念である.中でも月に存在する水が注目されている.水は人間の飲用の他,電気分解により水素と酸素を得て低温液化貯蔵して利用される.燃料電池の探査車の駆動,ロケット燃料としての利用,人間の呼吸のための酸素源などの検討が進んでいる.特に液体水素に関しては,これまでもロケット燃料として利用されてきたが,宇宙における更なる液体水素利用の拡大と,地上における脱炭素に向けた水素エネルギー社会の実現と密接にリンクした研究開発が重要となっている.
液体水素の長期貯蔵については,既存ロケットの能力向上のみならず,月面での水素燃料の補給の実現に必要な技術であり,宇宙開発の自在化・効率化に貢献する.更に,脱炭素に向けた液体水素を搭載する自動車,航空機,タンカー等へも利用でき,その波及範囲は極めて広い.宇宙エンジンについても従来の液体水素ロケットエンジンに留まらず,水素の特性を有効利用した新たなエンジンが求められている.この一つの解が小惑星探査機はやぶさで利用されたイオンエンジンをはじめとする電気推進であり,従来は高価かつ地球でしか採取できないキセノンガスが利用されてきたが,これを水素燃料に代えることは宇宙開発において多大なメリットがある.
キーワード
液体水素 / ISRU (In-Situ Resource Utilization) / 電気推進
ID | 2023_E489 |
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調査回 | 2023 |
注目/兆し | 注目 |
所属機関 | 大学 |
専門分野 | 宇宙・海洋・科学基盤 |
専門度 | 高 |
実現時期 | 5年以降10年未満 |
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) | 24 (航空宇宙工学、船舶海洋工学) |
分析データ クラスタ | 2 (マシンインテリジェンス/センシング・データサイエンス) |
研究段階
液体水素の貯蔵技術は各分野で進んでおり,液体水素タンカーはすでに川崎重工が実現している.液体水素航空機や液体水素自動車は各国で研究段階にある.
水素を用いた電気推進に関しては,実用例はないが,各種方式について各国で精力的に研究が進められている.
水素を用いた電気推進に関しては,実用例はないが,各種方式について各国で精力的に研究が進められている.
インパクト
宇宙産業の拡大,脱炭素社会の実現
必要な要素
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