NISTEP注目科学技術 - 2023_E431

概要
【深層学習による年齢形質画像からの年齢査定技術】
・魚類の年齢を推定する際、一般的には耳石と呼ばれる年齢形質に形成された輪紋の数から対象個体の年齢を推定する作業が行われる。
・耳石の輪紋は樹木の年輪ほど明瞭ではなく、その判読には熟練した複数人の技術者が複数回実施することで、輪紋数の計数精度を担保することが一般的である。
・今後、既存の耳石輪紋の画像と年齢情報を教師データとして、深層学習により耳石輪紋画像から年齢査定する技術の開発が見込まれる。
キーワード
深層学習 / 機会学習 / 人工知能
ID 2023_E431
調査回 2023
注目/兆し 注目
所属機関 公的機関
専門分野 環境
専門度
実現時期 5年未満
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 40 (森林圏科学、水圏応用科学)
分析データ クラスタ 43 (医用画像工学)
研究段階
・諸外国において、いくつかの限られた魚種で研究結果が出始めた段階である。
・我が国の重要水産資源である魚種での研究は、未だ始まったばかりの段階である。
インパクト
・この技術が一般的になれば、これまで熟練の技術者に依存していた魚類の年齢査定作業の自動化・高速化・精度維持が実現し、作業効率や人材不足によるボトルネックが解消される。
・我が国の魚類水産資源では、その持続的利用のために重要魚種を対象にその資源量の推定(資源評価)を毎年実施しているが、その際、年齢別の資源状況を把握するために漁業現場での漁獲物の年齢査定を行うことが不可欠となる。深層学習による年齢査定技術の実現および現場実装により、漁獲物の年齢情報収集が格段に効率化され、より多くの情報を処理できるようになることで水産資源評価そのものの精度が向上し、水産資源の持続的利用に貢献されることが考えられる。
必要な要素
・画像情報を用いた深層学習の発展は日進月歩であり、開発のベースとする学習済みモデルが今後さらに高性能化することも考えられる。したがって、現在の研究開発が短期間で陳腐化する可能性にも留意が必要である。
・機械学習の技術の発達は著しいが、分野横断的な連携不足に起因して、生物学、特に水産資源学の分野での利活用は十分に進んでいないと思われる。研究環境をサポートする技術開発としての側面から、生物学の分野でも深層学習の技術を積極的に取り込む姿勢も必要である。