NISTEP注目科学技術 - 2023_E420

概要
化学反応を予測するツールは大きく分けて、情報化学的手法と物理化学的手法に分けられる。前者は経験的なものであり、過去の膨大な化学反応例と予測対象の化学反応を、主として化学構造や反応条件などのパターン認識によって比較し、化学反応を予測する。精度は高くないものの、AIを活用した方法が盛んに開発されており、すでに一部実用化されている(SciFinder-nなど)。後者は非経験的なものであり、量子化学計算に基づく分子挙動によって化学反応が予測される。精度が高いものの、膨大なマシンパワーを要するため、容易ではない。量子コンピューターなどの実用化が実現すれば、化学反応予測の主流となると期待できる。
キーワード
反応経路探索 / 量子化学 / 逆合成解析
ID 2023_E420
調査回 2023
注目/兆し 注目
所属機関 大学
専門分野 ライフサイエンス
専門度
実現時期 5年以降10年未満
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 32 (物理化学、機能物性化学)
分析データ クラスタ 46 (データサイエンス/機械学習・AI)
研究段階
この研究領域では、北海道大学の前田理先生のグループが世界をリードしており、すでに QCaRAという量子化学的逆合成解析を開発している。創薬研究に適応できるほどの段階には至っていないものの、比較的簡単な化学反応の予測などには適応可能であろう。
インパクト
すでに学術界ではインパクトのある研究成果として受け入れられている。製薬産業への応用が期待される。実現すれば、有機化合物の合成経路探索が圧倒的に効率化されるため、医薬品開発に大きなインパクトを与えるはずである。
必要な要素
創薬研究で対象となる分子の合成法を計画するためには、マシンパワーの向上など、高速計算を実現する必要がある。