NISTEP注目科学技術 - 2023_E413
概要
陸水の閉鎖性水域,例えば湖沼,貯水池,ため池における二酸化炭素吸収によるカーボンニュートラルへの貢献
キーワード
淡水カーボン / 水草 / 植物プランクトン / 成層 / ブルーカーボン
ID | 2023_E413 |
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調査回 | 2023 |
注目/兆し | 注目 |
所属機関 | 大学 |
専門分野 | 環境 |
専門度 | 高 |
実現時期 | 5年未満 |
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) | 22 (土木工学) |
分析データ クラスタ | 14 (気候) |
研究段階
海洋におけるブルーカーボンは2000年くらいから注目されてきており,藻場などを利用して二酸化炭素を吸収させようとする活動が世界的になされている.一方で,陸水は二酸化炭素の放出源と考えられることが多かった.淡水カーボンについては,2015年くらいから研究が始まった.調査の結果,湖沼,ため池,貯水池は,中栄養以上であれば植物プランクトンの効果により二酸化炭素を吸収していることがわかった.中栄養とは,いわゆる健全な生態系が維持された状態である.世界的にみて,湖沼面積は沿岸浅場に比較して3倍程度の水表面積を有している.よって重要な二酸化炭素の吸収源となりうる.現在,植物プランクトンや水草を中心とした研究が進んでおり,企業との共同研究も開始しつつある.実用化に向けて関連論文を国際雑誌に投稿しているところであり,5年以内には淡水カーボンによる二酸化炭素の吸収効果を定量的に評価出来ると考える.
インパクト
陸水の湖沼は,カーボンニュートラルに向けた自然界における最後のフロンティアである可能性が高く,二酸化炭素の吸収量はブルーカーボンにも匹敵する可能性がある.よって,本研究を推進することにより,地球温暖化の緩和に向けて大きく貢献できる.製鉄業などの業種がカーボンエミッションを削減することはある程度まで可能であるが,カーボンニュートラルを達成するためには,ネガティブエミッション技術が必要であり,その点でも大きく貢献できる.
必要な要素
社会的な認知度を高める.陸水は二酸化炭素の放出源と考えられることが多く,多くの陸水の炭素循環に関係する研究者がそのように考えている.炭素循環と二酸化炭素の湖沼での吸収を一緒に考えてしまっているためだと考えられる.よって,研究者も含めた啓蒙活動が必要であると考える.