NISTEP注目科学技術 - 2023_E381
概要
二次イオン質量分析やX線光電子分光などの表面界面分析技術において、深さ方向分析でのスパッタに利用する巨大クラスターイオンビーム技術が急速に進展している。有機材料を極めてソフトにスパッタできるイオン銃としてガスクラスターイオン銃が2010年頃に実用化され、現在では深さ方向分析を行う表面分析装置に必須のスパッタイオン銃となっている。実用化されたのはソースガスとして希ガスのアルゴンを用いるものであり、有機分子をイオン化する効率は従来技術とあまり変わらない。近年、有機試料をソフトにスパッタするだけでなく、試料中の有機分子をソフトかつ高効率にイオン化することを目的として、ガスクラスターイオンビームのソースガスとして二酸化炭素や水蒸気を利用する研究が行われている。一方、ガスクラスターイオンビーム技術とはクラスターの発生手法が全く異なる、液体のエレクトロスプレーを利用した巨大クラスターイオンビーム技術も研究されており、液体ソースとして水やエタノールなどの有機溶媒を用いることが検討されている。どちらの巨大クラスターイオンビーム技術も従来技術より有機分子のイオン化効率を数桁以上向上させることが報告されており、巨大クラスターイオン技術は既存の表面分析装置の性能を大幅に向上できる可能性が高い。
キーワード
量子ビーム / 巨大クラスターイオン / 表面分析 / 二次イオン質量分析
ID | 2023_E381 |
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調査回 | 2023 |
注目/兆し | 注目 |
所属機関 | 大学 |
専門分野 | ナノテクノロジー・材料 |
専門度 | 高 |
実現時期 | 5年以降10年未満 |
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) | 34 (無機・錯体化学、分析化学) |
分析データ クラスタ | 11 (理化学/エネルギー・脱炭素) |
研究段階
研究室や企業において研究している段階
インパクト
先端計測技術分野へのインパクトはかなり大きい。先端計測技術は一般の人が直接的に関わるものではないが、先端計測技術が産業進展に与える影響は大きいので、社会へのインパクトは間接的に大と考える。
必要な要素
実現に向けては要素技術の進展が必要と考えます。