NISTEP注目科学技術 - 2023_E371
概要
産業を支える重要な基盤技術であるレーザー加工技術の革新。これまではレーザー加工は、金属などのバルク材料を大きく切る用途で主に使われていたが、超短パルスレーザーなどの最新のレーザー技術を導入することにより、これまでの技術では不可能であった超微細構造の作製などを行うことが可能になる。それに加えて、レーザー加工の産業応用における大きな問題であったレーザー加工の最適条件探索を、これまでの人力に代わってAIやシミュレーターのようなサイバー空間の技術を活用することによって、桁違いに高速に行うことができるようになる。これによって、これまで加工が不可能であると思われていた新たな加工を瞬時に行うことができるようになり、造形コストの低減はもちろんのこと、これまでに無かった新しい加工を実現することが可能となり、新たな産業基盤技術となる。
キーワード
レーザー加工 / AI / 超短パルスレーザー
ID | 2023_E371 |
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調査回 | 2023 |
注目/兆し | 注目 |
所属機関 | 大学 |
専門分野 | ナノテクノロジー・材料 |
専門度 | 高 |
実現時期 | 5年以降10年未満 |
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) | 18 (材料力学、生産工学、設計工学) |
分析データ クラスタ | 37 (電磁波・光学・レーザー・光半導体) |
研究段階
最新の超短パルスレーザーを用いることによって、これまでの加工技術では不可能であった新しい加工ができることは研究によって次々と明らかになってきている。これまでは、その物理的な原理に関しては学術的に解明することは難しかったが、現在、この点に関する文部科学省の国家プロジェクトとして進められており、今後5年以内に原理解明も大きく進むことが期待できる。それに加えて、AIを用いたレーザー加工結果の予測および最適化が可能であるという研究結果も、最近国内で報告が始まっている。さらに、これらの技術に対して興味を有している国内企業でコンソーシアムが形成され、100社を超える企業が参画している。
このように、基板となる要素技術に関しては着実に研究が進められており、それに関心を持つ企業も多い。現在は、これらの要素技術を統合して、産業の発展に資する真のサイバーフィジカルシステムを構築していく試みが進められている。
このように、基板となる要素技術に関しては着実に研究が進められており、それに関心を持つ企業も多い。現在は、これらの要素技術を統合して、産業の発展に資する真のサイバーフィジカルシステムを構築していく試みが進められている。
インパクト
この科学技術の実現によって、レーザー加工の学理という新しい学問分野が拓けることは重要であるが、それとともに、社会の発展に資する産業基盤技術となる大きな可能性を有している。モノの加工は、産業技術の根幹の一つであり、レーザーによって加工できないものが加工できるようになるということは、特に素材に強みを持つ企業が多い日本において、その産業競争力の向上に直結する。特に、レーザー加工は次世代の半導体製造技術としても世界中で注目されており、本科学技術が日本の半導体国家戦略に与える影響は極めて重要であると言える。
また、AIやシミュレーターのようなサイバー空間のリソースを活用して生産性を向上させることは、今後人口が減少することが確実である日本において重要な課題であり、本技術がその産業面での社会実装に大きく貢献できることも期待される。
このように、レーザー加工という技術の特性から、基礎科学から産業応用まであらゆるレイヤーに大きなインパクトをもたらす技術となると考えられる。
また、AIやシミュレーターのようなサイバー空間のリソースを活用して生産性を向上させることは、今後人口が減少することが確実である日本において重要な課題であり、本技術がその産業面での社会実装に大きく貢献できることも期待される。
このように、レーザー加工という技術の特性から、基礎科学から産業応用まであらゆるレイヤーに大きなインパクトをもたらす技術となると考えられる。
必要な要素
本科学技術は、特定のデバイスを販売するような形で社会実装されるものではなく、レーザー加工のサイバーフィジカルシステムというシステム全体で動くことで価値がもたらされるものである。このような形の成果物を、大学から社会に対してどのように社会実装していくのが最適解なのについては、研究を進めながら並行して研究を進めていくことが必要であり、それは研究者だけではない企業との協働をスムーズに行うことが重要となってくる。