NISTEP注目科学技術 - 2023_E370
概要
リチウムは核融合燃料製造に必須なキーマテリアルであり、リチウムの安定調達は原型炉段階への移行判断の一つとなっている。そこで量研では、ほぼ無尽蔵のリチウムが含まれる海水、使用済リチウムイオン電池(LIB)、塩湖かん水等からのリチウム回収研究に着手し、イオン伝導体をリチウム分離膜とした世界初の超高純度リチウム回収技術であるイオン伝導体リチウム分離法(Lithium Separation Method by Ionic Conductor; LiSMIC)の基本原理を確立した1)。
リチウム含有原液(海水等)と回収溶液(純水)の間は、イオン伝導体La0.57Li0.29TiO3(LLTO)をリチウム分離膜として用いて隔離し、イオン伝導体の両端に電圧を印加することによって、リチウムを回収する技術である。LiSMICの社会実装への試みとして、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の委託研究にて、2025年に廃車となるEV等の使用済LIBからリサイクルできるリチウム(水酸化リチウム2000トン)のコストを評価した結果、輸入価格(1287円/kg)の半分以下の製造原価で、輸入品より付加価値を有する超高純度の水酸化リチウム製造が期待できることが分かり、実プラント整備への事業化戦略に目処を得た。現在、QSTアライアンス会員とともに、実プラント整備に必要なデータの一つであるLiSMICの長期特性評価を行っている。また、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の大学発新産業創出プログラム「START」に採択され、START事業プロモーターユニットのユニバーサル マテリアルズ インキュベーター株式会社と連携し、2023年の新ベンチャーの起業計画を進めているところである。更に、核融合炉では自然界に7.6%しか存在しないリチウム6同位体が必要なため、LiSMICにおけるリチウム6と7の回収速度差を利用し、目標とする90%濃縮を目指した技術開発にも着手した。
新ベンチャーはLiSMICの社会実装だけでなく、核融合炉で必要なリチウム6の安定調達をゴールとし、核融合技術を次の世代に繋ぐことを企業理念とし、カーボンニュートラル実現に貢献する。
1)T. Hoshino, Desalination, 359, pp. 59–63, (2015)
リチウム含有原液(海水等)と回収溶液(純水)の間は、イオン伝導体La0.57Li0.29TiO3(LLTO)をリチウム分離膜として用いて隔離し、イオン伝導体の両端に電圧を印加することによって、リチウムを回収する技術である。LiSMICの社会実装への試みとして、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の委託研究にて、2025年に廃車となるEV等の使用済LIBからリサイクルできるリチウム(水酸化リチウム2000トン)のコストを評価した結果、輸入価格(1287円/kg)の半分以下の製造原価で、輸入品より付加価値を有する超高純度の水酸化リチウム製造が期待できることが分かり、実プラント整備への事業化戦略に目処を得た。現在、QSTアライアンス会員とともに、実プラント整備に必要なデータの一つであるLiSMICの長期特性評価を行っている。また、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の大学発新産業創出プログラム「START」に採択され、START事業プロモーターユニットのユニバーサル マテリアルズ インキュベーター株式会社と連携し、2023年の新ベンチャーの起業計画を進めているところである。更に、核融合炉では自然界に7.6%しか存在しないリチウム6同位体が必要なため、LiSMICにおけるリチウム6と7の回収速度差を利用し、目標とする90%濃縮を目指した技術開発にも着手した。
新ベンチャーはLiSMICの社会実装だけでなく、核融合炉で必要なリチウム6の安定調達をゴールとし、核融合技術を次の世代に繋ぐことを企業理念とし、カーボンニュートラル実現に貢献する。
1)T. Hoshino, Desalination, 359, pp. 59–63, (2015)
キーワード
リチウムイオン電池 / 核融合 / 電池リサイクル / 資源回収
ID | 2023_E370 |
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調査回 | 2023 |
注目/兆し | 注目 |
所属機関 | 公的機関 |
専門分野 | エネルギー |
専門度 | 高 |
実現時期 | 5年未満 |
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) | 31 (原子力工学、地球資源工学、エネルギー学) |
分析データ クラスタ | 31 (環境化学) |
研究段階
企業との共同研究が進み、社会実装へのベンチプラント規模での実証へ移行する段階。
インパクト
日本国内で新たなエネルギー資源となるリチウムの安定調達が可能となる。
必要な要素
ベンチプラント規模での実証に必要な開発費や人材確保が課題である。