NISTEP注目科学技術 - 2023_E361
概要
近年、宇宙開発に向けて、月や火星などへの常設基地建設や宇宙太陽光発電などの大規模な宇宙構造物を用いた計画が進められている。また、宇宙環境での計測システムや天文衛星などもより高度かつ大型化することが要求されている。小惑星等での資源採取には、その資源を運ぶ必要がある。これらの大型宇宙構造物を特定の軌道へ輸送することや物資の輸送が可能な推進システムの研究開発は今後の宇宙開発にとって重要である。これらの推進機には高燃費が要求され電気推進機と呼ばれるプラズマを利用した推進システムが適している。
世界的には、ホールスラスタと呼ばれる数kW級の推進システムが主流であり、現在日本においてもJAXAを中心に6kW級ホールスラスタの開発が進められている。一方で、ホールスラスタは、重量に対する推力性能が低いことや高燃費を得るためには非常に高価なキセノンが必要となることが懸念材料である。将来の大規模軌道間輸送では大量の推進剤用のガスが必要となり、キセノン以外での安価な推進剤での性能が比較的高い高周波プラズマを利用した推進機やより将来を見据えた推力密度の高い100kW級の電磁流体力学スラスタなどの開発も進められている。また、これらに対応した宇宙用電源システムや電池の開発も合わせて重要な技術である。また、電気推進システムは、想定されるミッション毎に適した推進システムを用意する必要があり、大規模輸送に適した推進システムのラインナップを揃え、将来の宇宙開発計画に対応できる基盤を確保することが重要である。
世界的には、ホールスラスタと呼ばれる数kW級の推進システムが主流であり、現在日本においてもJAXAを中心に6kW級ホールスラスタの開発が進められている。一方で、ホールスラスタは、重量に対する推力性能が低いことや高燃費を得るためには非常に高価なキセノンが必要となることが懸念材料である。将来の大規模軌道間輸送では大量の推進剤用のガスが必要となり、キセノン以外での安価な推進剤での性能が比較的高い高周波プラズマを利用した推進機やより将来を見据えた推力密度の高い100kW級の電磁流体力学スラスタなどの開発も進められている。また、これらに対応した宇宙用電源システムや電池の開発も合わせて重要な技術である。また、電気推進システムは、想定されるミッション毎に適した推進システムを用意する必要があり、大規模輸送に適した推進システムのラインナップを揃え、将来の宇宙開発計画に対応できる基盤を確保することが重要である。
キーワード
宇宙開発 / プラズマ技術 / 電池・電源
ID | 2023_E361 |
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調査回 | 2023 |
注目/兆し | 注目 |
所属機関 | 大学 |
専門分野 | 宇宙・海洋・科学基盤 |
専門度 | 高 |
実現時期 | 5年以降10年未満 |
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) | 24 (航空宇宙工学、船舶海洋工学) |
分析データ クラスタ | 36 (熱・流体・波・運動エネルギー) |
研究段階
海外で現在主流となっているホールスラスタについては、日本においても開発が進められており、研究開発においては海外に劣らない技術が蓄積されてきているが、宇宙実証と運用には至っておらず今後数年程度での打ち上げと宇宙運用による技術実証が必要である。
高周波プラズマを利用した推進システムは研究室レベルでは高い技術が得られており、今後実用化へ向けた開発のフェーズが期待される。電磁流体力学スラスタは基礎研究段階であり、実験室レベルでの動作はできているが、実用可能なレベルまでの技術向上が必要である。
高周波プラズマを利用した推進システムは研究室レベルでは高い技術が得られており、今後実用化へ向けた開発のフェーズが期待される。電磁流体力学スラスタは基礎研究段階であり、実験室レベルでの動作はできているが、実用可能なレベルまでの技術向上が必要である。
インパクト
GPSや天気予報など、宇宙技術はすでに我々の暮らしに必要不可欠である。これらの技術をより高度化し、より発展させるためには、必要な機器を宇宙空間の所定の軌道に配置することや、宇宙での資源採取後に所定の場所まで運ぶなどの輸送システムが重要である。輸送システム自体が、直接的に与える影響は小さいが、輸送システムの高度化により宇宙開発全般の高度化が期待でき、宇宙技術に関連するほぼすべての領域に影響を与えるものである。
必要な要素
宇宙開発は、大きなリスクが伴うものであり、ロケットによる打ち上げ機会は少なく、1つの遅れが数年単位の遅れとなる。一方で、地上でできる限りの準備を行うことは大前提であるが、宇宙でしか技術の実証はできないものも多い。特に宇宙開発は税金を利用した計画が多くより成果と確実性が求められるものであるが、それが過大となると、技術進展は遅れ、そのステップ幅も小さくならざる得ない。リスクと技術発展のバランスについては考え続ける必要がある。