NISTEP注目科学技術 - 2023_E359
概要
大気中のガスを栄養源として利用できる微生物の開発が期待される。地球温暖化の問題から、二酸化炭素の削減が必要となっており、最近は炭酸固定に関わる遺伝子を微生物に導入することで、二酸化炭素から直接有用化合物を生産する試みが行われている。また、世界的な人口増加から、農作物の生産量増加が望まれている。しかし、国際的に肥料価格が高騰していることから、植物の成長に必要な窒素源を肥料ではなく、大気中の窒素ガスを利用することで可能にすることが期待されている。しかし、窒素ガスは非常に安定な不活性ガスであることから、生物的に窒素を利用できるのは酵素ニトロゲナーゼのみである。ニトロゲナーゼ遺伝子を微生物、もしくは植物に導入して機能させることができると、現在広く用いられている尿素やアンモニアなどの窒素化合物を使用する必要がなくなる。これらの化合物は合成に大量のエネルギーを必要とすることから、地球温暖化の防止にもつながる。しかし、ニトロゲナーゼは嫌気条件下でしか機能しないことから、好気条件下で機能させるためには技術革新が必要である。
キーワード
窒素固定 / 合成生物学 / 大気ガス利用
ID | 2023_E359 |
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調査回 | 2023 |
注目/兆し | 注目 |
所属機関 | 大学 |
専門分野 | ライフサイエンス |
専門度 | 高 |
実現時期 | 5年未満 |
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) | 38 (農芸化学) |
分析データ クラスタ | 31 (環境化学) |
研究段階
研究室で開発している段階。
インパクト
ニトロゲナーゼの応用利用が可能になると、窒素肥料の必要がなくなることで価格競争力が増し、食料自給率の向上にもつながる。また、ひいては地球温暖化防止への貢献にもなるため、社会的課題の解決につながる。
必要な要素
好気型ニトロゲナーゼの実現のための要素技術の進展が必要であり、遺伝子組み換え作物についての規制緩和が求められる。