NISTEP注目科学技術 - 2023_E354

概要

全固体電池は、従来のリチウムイオン電池に比べて高エネルギー密度、安全性、充放電速度などの面で優れた特性を持つと期待される次世代電池技術である。技術の進展: 全固体電池の研究開発は継続的に進んでいるが、一部は先行して社会実装が進められているが、ブレイクスルーには諸問題を解決する必要がある。
 いくつかの企業が全固体電池の商業化に向けた取り組みを進めている。一部の企業が試作品や小規模な製品を発表しているが、量産に適した材料およびプロセスが確立されていない。全固体電池では、イオン伝導性の高い固体電解質を使用することで、より高速な充放電が可能となる。これにより、電気自動車などの高出力デバイスにおいても効率的な充電が実現される可能性があるのだか、界面抵抗を低減するブレークスルーがが求められる。
 また蓄電池を構成する資源確保は重要な課題であるが、蓄電池を構成するレアメタルは地政学的に不安定な地域に偏在している。次世代電池には供給不安の恐れが無い元素で構成することが好ましい。
キーワード
全固体電池 / 革新的蓄電デバイス / 再生可能エネルギー
ID 2023_E354
調査回 2023
注目/兆し 注目
所属機関 大学
専門分野 ナノテクノロジー・材料
専門度
実現時期 5年以降10年未満
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 36 (無機材料化学、エネルギー関連化学)
分析データ クラスタ 11 (理化学/エネルギー・脱炭素)
研究段階
材料系を限定した形で一部の企業では全固体電池の開発を進めている。電気自動車用から小型機器まで幅広い分野での使用を想定している。
研究段階では引き続き、高いエネルギー密度とサイクル安定性の観点から新材料の創出、既存材料のサイクル安定性向上のための技術開発が進められている。
インパクト
 カーボンニュートラル達成のためのCO2還元などの技術も開発されているが、水素を製造するにしても、高温高圧で反応を進めるにしても、エネルギー供給は絶対に必要であり、現状は天然ガスや石油由来の水素および電力に依存していて、再生可能エネルギーを効率よく利用できる仕組みが必要で、蓄電池はその要である。
 安価な大型蓄電池が開発されることで、単なる自動車の電化だけではなく、独立電源による住宅、CO2還元によってもたらされる高純度な合成燃料の製造(日本が産油国となる)などこれまでにない社会変革、経済効果をもたらす。
必要な要素
・全固体電池製造に必要となるプロセスの徹底的な洗い出しが必要である。材料開発が進められているが、材料単独で使うデバイスではなく、接合技術が明らかに不足している。
・社会の要請の期待の大きさに比べて、技術者、研究者の人口が圧倒的に不足している。研究者人口の多い中国に全てを奪われつつある。
・大学なので学生に対しては平等でありたいが、政治的に注意しなければならない国の留学生に対する対策は完全なざるで、帰国したら技術流出に対する対策がない。