NISTEP注目科学技術 - 2023_E352
概要
ヒトの平均寿命の延伸に伴い、生理的な老化による痴呆や、アルツハイマー病など疾患としての痴呆症(神経変性疾患)が増加してきた。脳の老化に伴う経済的な損失は非常に大きいと見積もられている。このような脳の老化(痴呆)は、身体的な寿命の延伸に脳の健康寿命が追いついていないことが原因と考えられる。神経変性疾患の研究は多くなされてきたにもかかわらず、その予防や治療は困難を極めており、生理的な老化に伴う脳の機能低下については、ほとんど分かっていなかった。
近年、マウスなどのモデル動物を用いた老化研究が注目を浴びており、脳の老化についての研究が進みつつある。生理的もしくは病理的に脳がどのような加齢性変化を起こすのかについて、形態的・分子的な研究に注目が集まってきている。この研究を集中的に推進することにより、脳の老化のメカニズムが明らかとなることが期待され、将来的にその予防法や介入法の確立へとつながることが期待される。
近年、マウスなどのモデル動物を用いた老化研究が注目を浴びており、脳の老化についての研究が進みつつある。生理的もしくは病理的に脳がどのような加齢性変化を起こすのかについて、形態的・分子的な研究に注目が集まってきている。この研究を集中的に推進することにより、脳の老化のメカニズムが明らかとなることが期待され、将来的にその予防法や介入法の確立へとつながることが期待される。
キーワード
健康寿命 / 老化 / 神経科学 / 脳 / 神経細胞
ID | 2023_E352 |
---|---|
調査回 | 2023 |
注目/兆し | 注目 |
所属機関 | 大学 |
専門分野 | ライフサイエンス |
専門度 | 高 |
実現時期 | 10年以降 |
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) | 52 (内科学一般) |
分析データ クラスタ | 0 (生活習慣病/摂食・吸収・代謝) |
研究段階
老化研究は時間がかかるため、ほとんど手付かずの状態であった。特に哺乳類の老化は、マウスでも2年半〜3年の寿命であるため、分かっていることは少ない。しかし、老化研究に特化した研究費(AMEDなど)の投入により、老化研究自体は注目を浴びており、まさに研究が始まりつつある段階である。老化した個体と若齢個体の間で発現に差のある分子が同定されてくるなど、基礎情報が蓄積されつつある。しかし、その分子と老化の関連を解析するには数年の時間を要することから、深い解析はこれからという段階で、原理の解明にはまだ時間がかかると思われる。
インパクト
老化による経済損失は非常に大きいと言われている。また、痴呆はアイデンティティの崩壊をまねくことから、患者本人にとっても辛く、また介護に関わる家族にとっても、自分のことを忘れてしまった親族に対して献身的な介護をしなくてはならないという精神的にも肉体的にも極めて過酷な状況におちいる。親の介護により仕事を辞めざるを得ない人もおり、社会問題として扱う必要がある。
健康寿命の延伸、特に脳の老化を食い止めることは、このような問題の根本解決になることから、社会に対するインパクトは非常に大きいと考えられる。
健康寿命の延伸、特に脳の老化を食い止めることは、このような問題の根本解決になることから、社会に対するインパクトは非常に大きいと考えられる。
必要な要素
老化研究の最も大きな問題点として、時間とお金がかかることが挙げられる。マウスの寿命解析に2年半〜3年を要するにも関わらず、多くの研究費は2〜5年の年限があるため、国の研究費で老化研究を進めることは難しい。10年単位の研究費の創出が必要になるのではないかと考える。
また、線虫など寿命の短いモデル生物も利用されつつあるが、脳の老化についてはやはり哺乳類の神経細胞を用いた研究が望ましい。ビッグデータの利用やin vitroモデルの作出などの研究も促進すべきだと考える。
最終的に研究成果をヒトに応用するためには、ヒトのデータを集めることが必要となり、介護施設との提携などをスムーズにするような橋渡しも必要だと思われる。
また、線虫など寿命の短いモデル生物も利用されつつあるが、脳の老化についてはやはり哺乳類の神経細胞を用いた研究が望ましい。ビッグデータの利用やin vitroモデルの作出などの研究も促進すべきだと考える。
最終的に研究成果をヒトに応用するためには、ヒトのデータを集めることが必要となり、介護施設との提携などをスムーズにするような橋渡しも必要だと思われる。