NISTEP注目科学技術 - 2023_E308

概要
植生の反射スペクトル情報から地下の情報を推定する技術の実現が期待される。一つは、①地下の鉱物資源評価、もう一つは、②地下水位の評価が有望。
①植物は、土壌から水分や栄養分を吸収するため、土壌中に特有の元素が濃集する環境(ニッケル等)では、特殊な植物が優先する。
②土壌の水分含有量が少ない乾燥地では、地下からの水分と栄養分が少ない環境で生き残れる植生が優先する。一方、水分含有量が多い湿地や沿岸域では、マングローブやパーム等が優先樹種となる。このような植生は、土壌水分や地下水位に応じて、葉の水分含有量(水分ストレス)が異なることが報告されている。葉の水分含有量は、特有の電磁波を吸収する特性を有するため、植生の反射スペクトルを詳細に観測すると、地下水位が推定できる。このような植生の反射スペクトルは、衛星やドローンに搭載したセンサで取得することができるが、これまでのセンサでは、特定の波長を細かい幅で取得することが難しかった。近年、ハイパースペクトルセンサの開発が進み、2019年に打上げられたHISUIでは、400から2500nmの範囲を10から12.5nmで反射スペクトルを取得できる。HISUIでは、REE鉱物ポテンシャルやCO2・メタンの吸収場所を特的できることが報告され、今後は、植生の反射スペクトルから地下水位の推定から泥炭地や湿地の気候変動・環境保全への活用、また、地下の元素分布を推定し、有用金属(ニッケル鉱物等)発見につながることが期待できる。
キーワード
宇宙 / カーボンニュートラル / 地球環境 / 生物多様性・保全
ID 2023_E308
調査回 2023
注目/兆し 注目
所属機関 団体
専門分野 宇宙・海洋・科学基盤
専門度
実現時期 5年未満
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 41 (社会経済農学、農業工学)
分析データ クラスタ 14 (気候)
研究段階
①地下の有用金属と特定植生の関係性は、現場で確認されている(金とヤブムラサキなど)。②植生の葉の反射スペクトル(885nm付近及び1240nm付近)と地下水位の間に関係性が有ることが報告されているが事例が少ない。従って、「原理・現象が科学的に明らかになった段階」。
インパクト
①EV車製造に貢献できるので、カーボンニュートラル実現に期待できる。
②泥炭地の地下水位を管理することで、泥炭分解や泥炭火災によるCO2放出が削減できるため、気候変動に貢献できる。
必要な要素
①植生の種類と地下の元素濃集、及び②植生の葉の含水量と地下水位に関係があることが一部報告されているが、実現に向けて今後は事例数を増やすことが必要。