NISTEP注目科学技術 - 2023_E289
概要
マテリアルズインフォマティクス(MI)によるモノづくりが、無機材料や低分子有機材料で当然のように適用されるようになった。ようやく、高分子材料MIについても成功事例が報告されるようになったが解決する課題が数多い。高分子材料MIの難しさは、様々な時空間スケールで構造機能相関を解明することが困難な点にある。また、「材料のほしい機能から条件やプロセスを突き止める」といったMIが目指す逆問題解析は、異なる時空間スケール間のパラメータ受渡しを実現することが高分子材料系で特に要求される。
こうした背景から、様々な実験データの解釈や予測を提供する『高分子材料シミュレーション』の技術進歩が注目されている。それには、計算精度を向上させるための「力場」開発や、スケール拡大を目的とした「粗視化モデル」の構築、本来シミュレーションが扱うことのできないスケールで発現する物性機能を検証する「非平衡計算」が挙げられる。これらは長年にわたって技術開発が取組まれてきたが、ここ数年でMI実現を目指した新たな提案がいくつかなされている。さらに、数学的アプローチを開拓する動きもみられ、シミュレーションで様々な材料情報を提供することの意義も出てきている。
こうした背景から、様々な実験データの解釈や予測を提供する『高分子材料シミュレーション』の技術進歩が注目されている。それには、計算精度を向上させるための「力場」開発や、スケール拡大を目的とした「粗視化モデル」の構築、本来シミュレーションが扱うことのできないスケールで発現する物性機能を検証する「非平衡計算」が挙げられる。これらは長年にわたって技術開発が取組まれてきたが、ここ数年でMI実現を目指した新たな提案がいくつかなされている。さらに、数学的アプローチを開拓する動きもみられ、シミュレーションで様々な材料情報を提供することの意義も出てきている。
キーワード
高分子材料シミュレーション / マテリアルズインフォマティクス / 力場 / 粗視化モデル / 非平衡計算
ID | 2023_E289 |
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調査回 | 2023 |
注目/兆し | 注目 |
所属機関 | 大学 |
専門分野 | ナノテクノロジー・材料 |
専門度 | 高 |
実現時期 | 5年以降10年未満 |
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) | 35 (高分子、有機材料) |
分析データ クラスタ | 46 (データサイエンス/機械学習・AI) |
研究段階
研究室で開発している段階から、企業共同研究に移行しつつある段階である。また、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)革新的構造材料のような国家プロジェクトも推進されていることから、10年以内には高分子材料MIの成功事例が次々と報告されるようになると期待される。
インパクト
樹脂をはじめとする、社会基盤を支える材料の開発コストが減少する。また、地球上最大の有機資源であるセルロース・キチンといった難溶性バイオマスといった扱いの難しい材料系に対する新たな研究手法を提供することになり、石油代替プラスチックやバイオ燃料などによる循環型社会の実現に大きく寄与する。
必要な要素
計算資源のインフラをどう確保するか、人材育成がかなり遅れているのでどのように支援するかが肝要である。