NISTEP注目科学技術 - 2023_E274

概要
現在創薬の分野では抗体医薬が隆盛を極めているが,抗体医薬は薬価が高い,分子量が大きい,細胞内をターゲットにできない他,製薬企業が抗体医薬研究を精力的に展開した結果,有効な抗体医薬が出尽くしているなどの課題も生じている.そこで,近年抗体と同様に標的に対して高い結合能と特異性を有しつつ,母体構造の異なる新規創薬モダリティ,特に核酸アプタマーが注目されている.
キーワード
核酸アプタマー / DNAアプタマー / 膜透過能 / 刺激応答性
ID 2023_E274
調査回 2023
注目/兆し 注目
所属機関 大学
専門分野 ライフサイエンス
専門度
実現時期 5年以降10年未満
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 47 (薬学)
分析データ クラスタ 5 (分子生物学/薬理学)
研究段階
核酸アプタマーは現在までに上市されているのは1種類のみであり,抗体医薬に比べてまだまだ開発が遅れている.これは,抗体が生体内に存在すること,ならびにワクチンなどにおける免疫学の知見などの蓄積がある一方,核酸医薬は生体内安定性や投与後の効果などで課題が残っている.一方,近年ではDNAが様々な立体構造を形成することも報告され,安定性向上やスイッチング制御法などの技術も向上してきている.現在,アカデミア発創薬ツールとして事業化も含めて研究展開をしている.
インパクト
抗体医薬と異なりアプタマー創薬は合成できることから,安価かつ安定的な供給が可能な創薬としても期待されている.我々が開発した4重鎖型DNAアプタマーは,細胞膜透過性という抗体には無い極めて重要な役割を持っていることから,抗体に替わる次世代創薬モダリティとして社会に多大なる貢献が可能である.
必要な要素
動物実験の知見蓄積,副作用の影響など.また,多様な疾患への汎用性確認などが必要.加えて,人工核酸を導入したアプタマー分子の増殖方法の確立などが今後必要となると考えられる.