NISTEP注目科学技術 - 2023_E271

概要
光ビームを特定の方向に集光させたり、光の強度を操作したりできる光制御デバイスの研究開発。

従来から、機械的に光を制御するデバイスは開発済みで、投射型ディスプレイ用DMD(Digital Mirror Device)や自動車の自動運転用LiDARなどが実用化されている。また、DMDや液晶をはじめとする高精細な空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)が開発され、部分的ではあるが動的なホログラフィーも試作されはじめている。
 メガネ無し立体で、しかも同時に多人数で見ることのできるホログラフィーは光の位相情報も忠実に再現できる。このため、従来のメガネ式(2眼立体)をはじめとする立体テレビで課題となっていた立体映像の奥行位置と映像表示面が異なる「調節と輻輳矛盾」が原理的に発生せず、めまいや眼精疲労が起こらない。しかも、人間の目と同じようにカメラを使って3D映像を撮影すると自動焦点機能が動作させることができる。
 しかし臨場感のある高画質で広い視野角をもつ動的なホログラフィーを実現するためには、高速で光を位相制御できる1μm以下の光変調素子を2次元状に高密度に並べた高性能なSLMを作成する必要がある。しかも、それらの素子を高速に並列駆動しなければならない。
 このように動的なホログラフィーのキーデバイスは高性能なSLMの開発である。また、光ビームを高速に曲げたり収束したり高精度に光ビームを操作できるビームステアリング素子でもホログラフィーと類似の3D表示(像再生型立体表示)を行うことが可能となる。これらSLMやビームステアリング素子の開発では、液晶や電気光学材料、さらにはフォトニック結晶と発光素子を組み合わせた光制御デバイスなどが提案されている。
 自然な3D映像を実現するためには3Dをリアルタイムで取得できる撮影技術の開発も不可欠となる。さらに取得した3Dデータからホログラムを高速に作成する技術、また、それらのホログラムデータを伝送するための映像符号化技術の開発も重要となる。最近になってスマホで撮影した2D映像と深度測定から簡易的に3Dデータを取得し、その3DデータからホログラムのCG動画を作成する技術が報告されている。今後は光制御デバイスの開発に加えて、より高画質で高性能な3D映像撮影技術と映像符号化技術や伝送技術の開発も重要になる。
キーワード
光制御素子 / ホログラフィー / 空間光変調器 / 光偏向 / ビームステアリング
ID 2023_E271
調査回 2023
注目/兆し 注目
所属機関 団体
専門分野 ナノテクノロジー・材料
専門度
実現時期 5年以降10年未満
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 61 (人間情報学)
分析データ クラスタ 38 (計算機・電気通信・通信デバイス・量子計算機)
研究段階
-
インパクト
スマホなどの通信分野、テレビなどの放送分野、遠隔医療や脳スキャナーなどの医療分野、さらには大規模大容量のデータを扱う光通信システムへの応用などが期待される。
必要な要素
-