NISTEP注目科学技術 - 2023_E27

概要
分子をシステム化する「分子ロボティクス」の技術が注目されており、今後、分子材料のレベルから人工的に設計したロボットの開発が現実のものとなることが期待されています。分子ロボティクスでは、DNAなどの核酸、キネシンなどのタンパク質、脂質膜などからなるベシクル、を含む生体由来分子と、有機化学・無機化学の技術で作られた非天然の分子を巧みに組み合わせます。単なる分子の寄せ集めとは異なり、機械工学や情報科学などの英知を使い、合理的にプログラムされた分子システムを作ることが重要になります。従って、様々な分野の知識や技術を集結した、学際的な科学技術であると言え、国として今後研究を進めるためには、大きな予算的支援と強いリーダーシップが必要です。

分子ロボティクスは、希少価値の高い微細なモノづくりの方法論を根底から更新するものであり、将来的には、インテリジェントマテリアル、スマートドラッグデリバリーシステム、生体内計測などへの応用が期待されています。
キーワード
DNAオリガミ / DNAナノテクノロジー / 分子コンピューティング / 分子サイバネ費tクス / 分子ロボティクス
ID 2023_E27
調査回 2023
注目/兆し 注目
所属機関 大学
専門分野 ナノテクノロジー・材料
専門度
実現時期 10年以降
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 90 (人間医工学)
分析データ クラスタ 54 (理化学/分子化学)
研究段階
すでに研究分野の目標として、分子ロボティクスは関連研究者には広く浸透していると言えますが、企業などとの共同研究は進んでいません。現在様々な研究室で開発を行っていると同時に、複数の研究室が比較的小さなプロジェクトを進めている段階だと考えられます。
インパクト
分子ロボティクスは、生物が発生・代謝・複製を行うような原理、仕組みでモノづくりを行います。例えば、形状形成、エネルギー変換、物質変換、自己維持材料、投薬制御などへの応用が期待されます。結果的に、新たな医薬技術、エネルギー生産、高機能材料などの産業へと結びつくと考えられます。
必要な要素
分子ロボティクスは複数の研究分野にまたがる学際的な研究のため、既存の学部などの枠にとらわれない研究者が排出され、かつ重宝されると考えられます。そのような専門を一つに絞れない才能を持つ人材を許容する環境や、研究費を支援する枠組みが必要と言えます。