NISTEP注目科学技術 - 2023_E267

概要
あえて回答するとすれば,野外で撮影した画像を使って送粉者や樹種などの生物を同定できるディープラーニングベースのAIの実現には期待を寄せています.例えば,ある森林に生えている植物の中に養蜂の蜜源植物となるものがどの程度含まれるかや,ある地域の昆虫群集に何が含まれるかといったことを,現地で写真を撮るだけで同定できるような技術です.
キーワード
ディープラーニング / 同定 / 環境アセスメント / AI
ID 2023_E267
調査回 2023
注目/兆し 注目
所属機関 大学
専門分野 環境
専門度
実現時期 5年未満
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 39 (生産環境農学)
分析データ クラスタ 50 (農業・森林)
研究段階
植物のさく用標本を同定するAIやマルハナバチを画像から同定するAIなどは既に存在するため,他の生物種についても技術的には可能な段階と思います.分類群ごとに正確な教師データを収集ことが最大のネックとなっていると思うので,そお遠くない将来に実現すると思われます.
インパクト
開発によって地域の自然環境を意図せず破壊してしまう頻度を減らせます.現在も,農地の区画整備などを行う際にはその地域の自然環境を調査して,環境に配慮した工事を行うことになっていますが,その地域にどのような生物が生息しているのかという基本的なことでも,専門家が同定しないと明らかにできません.しかし自然環境を正確に評価できる専門家の数は不十分であるため,専門家不在の状態で事前調査を済ませ,保護上重要な生物が生息していることを見落としたまま開発が進んでしまうケースが後を絶ちません.野外で生物の同定ができるAI(というかアプリ)があれば,役場の職員のような立場の方でも地域の自然環境を調査することが出来るようになるため,調査不足によってうっかり自然度の高い環境を開発してしまうという事態も減るのではないでしょうか.
必要な要素
技術的にはさらなる発展は不要で小.AIに教師データを提供するための資金と労力だけが課題です.教師データの生成には,専門家によって同定された正確な画像情報が不可欠です.専門家が同定AIの開発に参加できるような配慮と,さまざまな分類群の専門分野の後継者の確保が必要です.具体的には,各生物分類群の専門家の研究をサポートするスタッフの増員や,専門家自身の研究活動に対する基盤研究資金の充実が必要です.競争的研究資金ではダメです.