NISTEP注目科学技術 - 2023_E257

概要
【機械学習を用いた初代星の理論的探査】
宇宙はビッグバンから始まり、膨張による冷却を通じて恒星や銀河が誕生した。宇宙で最初に誕生した恒星を初代星と呼び、宇宙最初期の宇宙環境を探るための重要な天体である。
初代星は近傍にある星からの光を分光することによって得られる表面元素組成分布から選別が行われると期待されているが、これまでのところ、銀河系内や近傍矮小銀河内にはその直接的証拠は見つかっていない(ただし、初代星に限りなく近いと考えられている天体は見つかっている)。
一方、遠方銀河にある恒星を直接観測することによって100億光年以上離れた星(100億年以上前に誕生した星)を発見するという試みも行われているが、観測装置と観測精度による限界のために、実現していない。
どちらの方法にせよ、初代星を同定するには観測と理論モデルを照合するという作業が欠かせない。そこで、機械学習を活用することで初代星を直接あるいは間接的に検出するという研究が活発化している。今後も機械学習によるイノベーションが期待され、上記の研究テーマがどのような方向に進むのかを見極めるのは困難であるが、注目に値すると考えている。
キーワード
初代星 / 初期宇宙 / 機械学習 / 宇宙物理学
ID 2023_E257
調査回 2023
注目/兆し 注目
所属機関 大学
専門分野 宇宙・海洋・科学基盤
専門度
実現時期 5年未満
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 16 (天文学)
分析データ クラスタ 9 (素粒子・原子核・宇宙物理学)
研究段階
機械学習の天文シミュレーションへの応用等は多くの分野で行われている。特にビッグデータ等のデータ解析と相性がよく、画像解析等でも活用されている。例えば、James Webb宇宙望遠鏡などによる遠方宇宙の撮像観測が実施されれば、機械学習による天体の選別などが可能になるかもしれない。近傍の天体の元素組成分布データから初代星による寄与を推測する研究が行われているが、直接的な証拠と付き合わせることはできず決め手に欠くが、観測データの蓄積や新しい研究手法の開発によって、確度の高い議論が可能になるかもしれない。
インパクト
知の創出、研究手法の他分野への応用、国際的な共同研究の促進
必要な要素
観測技術の進展や既存の枠にとらわれない新しい発想。