NISTEP注目科学技術 - 2023_E240

概要
農林水産省によって「みどりの食料システム戦略」が2021年5月に策定された。本戦略の達成目標のひとつとして、2050年までに化学農薬の使用量をリスク換算で50%低減することが掲げられている。化学農薬の低減技術として、生物農薬、RNA農薬、バイオスティムラント、カプセル化などが挙げられる。化学農薬は毒劇物で病害虫に対する特異性が低いため、生体や環境に対する負荷が大きいのに対して、RNA干渉を利用したRNA農薬は特定の病害虫のみに作用する特異性を有しているだけでなく、遺伝子組み換えが起こらない理想的な農薬として期待されている。
キーワード
RNA農薬 / 減農薬 / 環境負荷低減
ID 2023_E240
調査回 2023
注目/兆し 注目
所属機関 大学
専門分野 環境
専門度
実現時期 5年以降10年未満
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 39 (生産環境農学)
分析データ クラスタ 50 (農業・森林)
研究段階
RNA干渉は、遺伝子発現の抑制という新しいメカニズムを利用した画期的な技術であり、医療や農業分野での応用が期待されている。RNA農薬は、このRNA干渉を利用した技術で、現在、標的とする病害虫のRNAの同定、分解されやすいRNAの安定的な送達、病害虫を対象としたin vitro実験・in vivo実験、安全性の評価などについて、研究室で開発されている段階である。
インパクト
RNA農薬が実現した際のインパクトとして、化学農薬と比べると、環境影響の軽減、耐性菌の発生抑制、作物収量の向上、農産物の安全性の向上などが期待できる。
必要な要素
実現に向けて必要な要素として、RNAの細胞内への送達技術、目的病害のRNAの選定、安全性や環境影響評価が挙げられる。