NISTEP注目科学技術 - 2023_E234

概要
宇宙環境の予測技術:宇宙環境をモニタリング観測して、その観測データと数値シミュレーションによって宇宙環境の変動を事前に予測する技術。一般に宇宙天気予報と呼ばれている。現在、産業界の宇宙進出が活発化されている一方、宇宙環境の擾乱によるインシデントも散見されるようになってきた。これらを回避することは学術的にも興味深い挑戦であり、社会への貢献度も高い科学技術と言える。自然現象としての宇宙環境擾乱の理解が年々進む一方、その理解を防災・減災につなげる技術は発展途上であり、産学官の連携が効果を発揮する科学技術開発と言える。
キーワード
宇宙天気予報 / 宇宙環境 / 太陽嵐 / 宇宙気象レーダー
ID 2023_E234
調査回 2023
注目/兆し 注目
所属機関 大学
専門分野 宇宙・海洋・科学基盤
専門度
実現時期 5年未満
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 24 (航空宇宙工学、船舶海洋工学)
分析データ クラスタ 2 (マシンインテリジェンス/センシング・データサイエンス)
研究段階
自然現象としての太陽嵐や宇宙環境擾乱現象は原理・現象を科学的に説明できつつある段階にある。現在、研究室単位では宇宙天気予報の予測システムの開発ができている。一方、これらを地球の気象予報のように一般社会に向けて実用化する部分は課題となっており、日本は諸外国に比べてやや遅れ気味である。
今後の高精度化や実用化に向けては、企業との連携によって社会実装を加速させるべきで、特にデータ同化などのデータ解析技術やAI技術、HPC等の計算技術を持った企業との共同研究を活発化させるべき段階に来ている。
インパクト
宇宙への産業界の進出は目覚ましいものがあり、宇宙には現在、情報通信分野を中心に様々な社会インフラが展開されている。宇宙天気予報の実用化によって、宇宙の社会インフラの安定的な運用を実現することは社会的基盤の強化に直結する。特に宇宙に展開する社会インフラは情報通信衛星のように大きな経済的インパクトを持っており、これらを守ることは経済効果としても大きい。また、宇宙で生活する人々にとっての健康問題を改善する効果も期待できる。
必要な要素
宇宙環境のモニタリング技術の進展。現在、データ同化やAIなどの技術はめざましく進展しており、企業との共同研究もしやすくなってきた。一方、同化するデータやAIが学習するデータは宇宙環境においては圧倒的に不足している。この分野で日本がリードするには、宇宙環境のモニタリング技術を進展させデータを取得する必要がある。太陽風のシンチレーション観測など地上から可能な宇宙環境のリモートセンシング技術は費用対効果が高く即効性も期待できる。
宇宙環境変動のリスクの社会への啓蒙活動も必要。このままのペースで宇宙開発が進めば、そのうち「想定外」の宇宙天気災害は発生するだろう。その時になって、学術的には発生が予想されていたのに軽視した犯人探しをするような事態が予想される。日本は災害大国で、自然災害に対するリスクに敏感と言える。よって社会への啓蒙活動を通じてこの状況を効果的に改善できるかもしれない。